その後初めての洋食の食事が終わると人狼達は当然のように宴会を始めるが、横島と魔鈴は次々に人狼達に酒を勧められてあっという間に酔っ払ってしまう

横島は今回人狼の修行に付き合った為に、以前よりも仲間意識が高まったらしく男性の人狼に酒を多く勧められている

一方魔鈴は料理が気に入った女性の人狼に酒を勧められていた

彼女達は他にも料理が知りたいらしく、魔鈴に作り方や材料についていろいろ尋ねながら酒を飲んでいる

しかし人間の横島と魔鈴と人狼では酒の強さまで違うらしく、二人は早い段階で酔っ払ってしまう

横島と魔鈴はそれほど酒に弱い訳ではないのだが……


「俺達は人狼と妖狐は合わないと聞いたんだがな～」

そして残るタマモとシロの周りには若い人狼達が集まっていた

彼らは人間の街の事や妖狐の事をシロやタマモにいろいろ尋ねている

古来より人狼と妖狐は仲が悪いと言われており実際仲が悪かったようだが、彼ら若い人狼達は村からほとんど出た事がない者も多く妖狐を見たのはタマモが初めてだった

年配者などから聞いた話で妖狐は合わないとの固定観念があったが、実際にシロとタマモを見てると今まで自分達が聞いてきた妖狐とあまりに違うため不思議に感じてるようだ


「私も分からないわ。　前世の記憶なんてほとんどないし……　ただ実際に仲が悪くなるほど相手を知ってるのかは疑問だけどね」

不思議そうな人狼の若者にタマモは少し考えてみるが、正直相手をよく知らないのだろうと言った方が正しいのだろうと考えていた

元々妖狐は他種族との交流がない為に基本的には仲がよくないと見られがちだが、実際は仲が悪いほど相手を知らないケースが多い

まあ確かに種族の性質的な違いもあるし大昔は仲が悪かったのかもしれないが、実際のところ近年では人狼と妖狐が関わる機会はあまりなく噂が独り歩きしてる状態だった


「妖狐はいいな～　俺達は尻尾を隠す術は難しくて使えないんだ」

基本的に変化の術は妖怪には広く伝わっており人狼も使えるが、細かな術が苦手な人狼ではなかなか使えないようである

僅かに変化の術が使える人狼が尻尾を隠して街に行くようだが、彼らは自由に行けないのためタマモやシロが羨ましいようだった

元々閉鎖的な里に住む彼ら人狼だが、若い達は好奇心から外に出たい者が多いのかもしれない


「横島や魔鈴さんみたいな人間ばっかりじゃないから人間の街は危険よ。　私やシロは二人が居るから安全なだけだもの」

街への憧れが見える人狼にタマモは現実の厳しさをやんわりと伝える

個人単位では優しい人はいるが、人間社会は決して妖怪に優しくなどないのたから……


「そうでござるか？　拙者にはみんないい人に見えるでござるが」

「そうね、確かにいい人も居るわ。　でも私達が守られてるのは忘れちゃダメよ。　気をつけないと道具のように使われることもあるのよ」

信じやすいというか単純に見えるシロや人狼の若者達にタマモは人間社会の恐さを伝えずにはいられなかったようだ