嵐を呼ぶ再会

遠くに見える山々に夕日が沈もうとする頃、この日も村の人狼達が集まっての食事となるようだ


「白い煮物か?」

「牛の乳の煮物らしい」

魔鈴が作ったホワイトシチューに人狼達は不思議そうな表情で鍋を覗き込む

他には先程タマモとシロが捕った魚と、人狼が今夜の夕食用に捕った魚をソテーにしてトマトソースを添えている

それらの見慣れぬ料理に一見すると不思議そうだが、尻尾がブンブンと振っていることからかなり期待してるらしい

昔ながらの和食器にみそ汁の代わりに盛られたシチューと、焼き魚の代わりに盛り付けられたソテーの構図に横島は微妙に違和感を感じるが人狼達は特に気にした様子はなかった


「お口に合えばいいのですが……」

そんな中で魔鈴は多少不安そうに人狼達が食べるのを見つめている

シロに意見を聞いて決めたメニューだが、人狼が全てシロの味覚と同じとは限らないし大人は違うかもしれない事から少し不安だったようだ


「なんとも不思議な味だな~」

初めて食べる洋食に人狼達は多少戸惑いながらもガツガツと食べ始めた

中には人間の街で食べた事がある者も僅かに居るようだが、多くの人狼達にとっては初めての味である

ある意味カルチャーショックのような感覚のようで、人狼達は不思議そうにしながらも瞬く間にシチューをお代わりしていった


「最近の人間はこんな物を食べてるのか~ 里でも作れるかな?」

「いくつか人間の街にある食材を買いに行けば作れるらしい」

初めは不思議そうだった人狼達だが、食べていくうちにその味に嵌まっていく

今までの里には全くなかったタイプの味なだけに驚きはあるが、彼らはその味が気に入ったようで里でも作れないかと話が盛り上がる


「先生、ずいぶん疲れた様子でござるが大丈夫でござるか?」

一方シロとタマモは疲れた様子の横島を不思議そうに見ていた

横島が人狼の男性達に誘われて手合わせしたのは知っているが、タフなはずの横島が疲れた理由は分からないようだ


「ああ、大丈夫だよ。 ただちょっと疲れただけだ。 やっぱ人狼のスタミナって凄いな。 シロの散歩が本当に散歩だったの理解したわ」

不思議そうな二人に横島は渇いた笑顔を見せるが、やはり疲れは隠せない

人狼と横島の手合わせは当初は横島が圧倒するように有利に進めていたが、そもそもスタミナが桁違いだった

頼まれて二人目や三人目と相手をしていくうちに横島は疲れ果ててしまう

人狼の感覚では食事前の軽い運動のようだったが、横島にしたら本格的な修行のようなキツさだったのだ


「そりゃそうでしょ。 スタミナや体力じゃ人間は勝てないわよ」

改めて人狼の力を知ったと言う横島に、タマモは何を今更と言いたげな表情で言葉を返す

タマモとしてはシロの体力やスタミナをよく理解してるので、横島がそこを理解してなかった方が不思議らしい

そもそも人狼に合わせて付き合えただけでも横島は人間離れしてるのだが、横島本人はあまり理解してなかった

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