嵐を呼ぶ再会

それは静かな世界だった

森を吹き抜ける風の音や川の流れる水の音しか聞こえない世界で、横島と魔鈴はお互いの温もりに酔いしれる

そのまま目を閉じた魔鈴に横島も……


「くしゅん!!」

静かな二人の世界を壊したのは、誰かのクシャミだった

予期せぬクシャミに横島と魔鈴は体をビクッとさせて離れてしまいクシャミの元に視線を送るが、そこではシロがあからさまに寝たふりをしている


「おっ、あんなところに美味しそうな猪が!」

あまりにも分かりやすい寝たふりに横島と魔鈴は顔を見合わせ笑いを堪え、今度は横島がわざとらしく大きな声で猪が居ると声を上げた


「クーン!?」

横島の声に即座に反応したシロは尻尾をはち切れんばかりに振ってキョロキョロと猪を探すが、当然見つかるはずもなく首を傾げてしまう


「……バカ犬」

近くで同じく目立たぬように寝たふりをしていたタマモは、ため息混じりの一言と共に自分の脱ぎ捨てた服の元に歩いていく

タマモはあまりに幼稚な横島の嘘に引っ掛かったシロに、一言言わずにはいられなかったようである


「ワォーーン!!」

今度はタマモの言葉に反応するように何かを叫ぶシロだが、その意味は言わずと知れたことだろう


「じゃあ服を乾かして村に戻りましょうか」

ちょっと残念そうに自分の服の元に向かう二人に横島と魔鈴は我慢出来ずに笑ってしまうが、自分達は文珠を使って濡れた服を乾かす

流石に濡れたままで人狼の村に戻るのは恥ずかしかったらしい



「お前ら覗きはいかんぞ、覗きは……」

「先生も以前はよく覗きをしたと聞いたでござる」

「私は覗いてないわよ。 たまたま目が覚めたら見えただけ」

村への帰り道、魚をてに持った横島は過去の自分を棚に上げてタマモとシロに説教を始めるが、説得力があるはずがなかった

シロは横島の過去の聞いた話を持ち出し、タマモは証拠がないと言わんばかりにシラを切る

魔鈴はそんな三人が可笑しくて仕方なかったようだ


「横島さん覗きが好きなんですか?」

「いやいや、誤解っすよ! そんな事した事もないっす」

クスクスと笑いながら覗きが好きかと改めて尋ねた魔鈴に、横島は慌てたように否定するが嘘なのが冷や汗を流しておりバレバレである


「私は覗かれたことないですよね。 そんな魅力がなかったんでしょうか……」

「そんなことないっすよ! 魔鈴さんの家が普通に東京にあったらバンバン覗いてました!!」

嘘を見抜いた魔鈴がちょっと悲しそうに自分は覗かれたことがないと告げると、今度は横島は慌ててしまい覗けるもんなら覗いてたと言い切ってしまう


「横島さん、お願いですから他では覗きはしないで下さいね」

「そんなことしませんって!」

あっさりと本音を暴露した横島に魔鈴は笑いが止まらない様子で覗きをしないように告げるが、当の横島はテンパったようにオドオドするだけだ


「バカばっかりね」

分かりやすい誘導に簡単に乗った自称師弟コンビにトドメを刺したのはタマモの冷たい一言だった

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