嵐を呼ぶ再会

(うーん、なんか鵜飼いになった気分だ)

さて横島達の方はと言えば、獣形態のシロとタマモが川に潜っては鮎やイワナなどを捕まえて口にくわえて横島の元に持って来る

まるで鵜飼いのようだと思う横島だが、さすがに口に出すことはなかった


「にしても器用だな」

川の緩やかな流れに身を任せて泳ぐ二人は、出来るだけ気配を消しつつ魚を見つけると一気に潜って魚を捕まえて来るのだから見事である

野生の狼や狐が川で魚を捕まえて食べるなど聞いた事がない横島だが、妖怪の二人ならば魚を捕まえても不思議ではないと思う

そんな二人だが自分達で食べる10匹ほどの魚を捕まえると、それ以上は捕まえる事なく楽しそうに川で遊び始める

シロはいつもと同じだが、タマモはいつもより元気というかアグレッシブだった

やはり自然の中だとタマモも嬉しいようである


「あらあら楽しそうですね」

それから少し時間が過ぎて魔鈴が横島達の元に来た時には、二人に続き横島も裸足で川に入って遊んでいた

横島のズボンは膝から下がすでに濡れているが、最早横島は気にした様子もなくタマモとシロと一緒に水をかけたりして騒いでいる


「魔鈴さんも一緒にどうっすか?」

「そうですね。 ちょっとだけなら……」

水面からちょこんと顔を出すタマモとシロに誘われるように魔鈴も靴を脱ぎ川に入るが、今日の魔鈴は長めのスカートなので裾の方が濡れないように膝上くらいで縛っていた


「横島さん、そんなに見られるとちょっと恥ずかしいです」

スラリと伸びる白い足と無理矢理ミニスカートのように縛られたスカート姿の魔鈴に、横島の熱い視線が注がれ魔鈴は顔を赤らめている


「いや~、すんません。 すんません。 なんかこうグッと来るものが…… ってお前ら何処行くんだ? 変な気を遣うんじゃねえ!」

恥ずかしそうにする魔鈴の姿に横島は思わず飛び掛かりそうになるが、ニヤリと意味深な笑みを浮かべたタマモとシロが静かに離れて行くと横島はハッとして我に帰っていた


「遠慮しなくていいわよ。 私達あっちで遊んでるから」

「ク~ン」

獣形態でも話せるタマモはごゆっくりと言わんばかりの感じ話すが、話せないシロも表情は同じでありタマモの隣でコクコクと頷いている


「お前らな……、いくら俺でもそんな事言われて、はいそうですかってならんわ!!」

ニヤリとする二人を横島は何かをごまかすように追いかけ始めるが、川の中で獣形態の二人に敵うはずもなく逆に横島が遊ばれる始末だった

そのままタマモとシロは逃げ回りつつ途中で魔鈴をも巻き込んで水の掛け合いやら鬼ごっこのような状況になり、結局横島と魔鈴はずぶ濡れになってしまう


「私、こんな遊びしたの始めてですよ。 川で遊ぶなんてなかったですから」

しばらくして疲れた横島と魔鈴はずぶ濡れのまま川岸の岩場に腰掛けて一息つくが、魔鈴はどこか晴れやかな表情だった

都会育ちの魔鈴にはなかなか自然で遊ぶような機会はなかったらしい


19/62ページ
スキ