嵐を呼ぶ再会

さて九月も中旬に入った頃、横島達四人は久しぶりに人狼の里を訪れていた

主な理由は休日を利用して遊びに来たのだが、魔鈴はシロの今後の教育方針を長老に相談する必要もあったのである


「静かでいいとこだな~」

里に来て早々に魔鈴は長老に話があるからと先に長老の家に向かったが、横島とタマモはシロに誘われて近くの川で釣りをしていた

清流と呼ぶに相応しいその川は泳ぐ魚が見えるほど澄んだ水だった


「川の水が美味しいわ。 街の水は魔鈴さんの水以外は薬臭くてダメだし」

山の自然に気分が良くなるのは、横島よりもタマモやシロの方が上かもしれない

嗅覚や味覚が人よりも敏感な二人は水道水ですら口に合わないようである

まあ我慢出来なくはないし文句を付けたこともないが、やはり美味しい水が飲みたいのは当然だった

ちなみに魔鈴は水道水を魔法で浄化してから料理や飲み水に使っている

これは元々使用している魔法料理の一貫の作業の一つであり、限りなく自然に近い水にする事で料理を最大限引き立てる作用があった

タマモとシロにはこの水の味違いが分かるらしく、魔鈴宅に住んでからのお気に入りの一つになっている


「里ではこの水を使ってるから当然でござる」

水や自然を褒められたシロは自分の事のように喜びの表情を見せていた

やはり仲間や人狼の里はシロの自慢なのだろう


「こうしてみると自然と共に生きるのも悪くないのかもな……」

森の木々が風で揺れる音や水の流れる音しかしない自然に、横島はふと高校入学する頃を思い出していた

言葉も通じずに自然しかないようなナルニアに行くのが嫌で始めた一人暮らしだったが、あの時ナルニアに行ってればどうなっただろうとふと考えてしまう

意外と住んでみれば悪くはなかったのではと考えていたのだ


(まあ魔鈴さんやこいつらが居るからこそ、そう思うんだろうな)

あの時ナルニアに行ってればどうなったかは考えるが、それは魔鈴やシロタマが現在一緒に居るからこそ考える事かもしれないと思う

少なくとも横島は一人で自然しかない場所に行きたいとは思わない訳だし


「釣れないわね~ 泳いじゃおっか?」

「いいでござるな。 直接魚を取った方が早いでござるよ」

「いいわね。 じゃ行くわよ」

魚を釣りはじめて一時間近くが過ぎた頃、全く釣れない状況にタマモは突然泳ぎたいと言いだしシロは直接魚を取ると言い出す


「ちょっとお前ら泳ぐったって水着も持って来てないだろ……」

横島はとっさに水着や着替えがない状況を心配して止めに入ろうてするが、タマモとシロは獣形態に変化すると川に飛び込んでしまう

その結果先程まで二人が居た場所には、服や下着が着ていたままの形で岩場の上に落ちていた


「そっか、お前らならそういうこと出来るんだもんな」

二人が獣形態になれるという事など全く頭に無かった横島はいろいろ考えてしまったらしいが、タマモとシロは獣形態で気持ち良さそうに泳いでいる
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