その後見学の魔理を連れた唐巣とピートは除霊に向かうが、到着した場所はまるで廃墟のような工場である


「神父様、わざわざありがとうございます。　今回は無理な事をお願いしてしまって……」

到着するなり唐巣は工場の持ち主らしき中年男性と話をするのを、魔理は僅かに緊張気味な表情で見ていた

中年男性は普段の苦労が滲み出てるような表情であり、まるで病人のように魔理には見えてしまう


「ここはいわゆる零細企業で、通常のＧＳに頼む料金が払えないので先生に話が来た依頼なんです」

そんな中、ピートは魔理に今回の依頼の内容を教えていく

例によって今回も料金が払えない依頼であり、唐巣としてはよくある依頼の一つだった

中小零細企業の中には高額な除霊料金を払えないで辞める霊障倒産がたまにあるのだが、唐巣はそういった依頼も無料で積極的に受けている


「噂には聞いてたけど、本当に無料でやってるんだな……」

「基本的に先生は断らないからね。　最近はオカルトＧメンからも依頼が回って来ますから」

「えっ！？　何でオカルトＧメンが！？」

善人で人格者だと噂を聞く唐巣の現状に改めて驚く魔理だが、ピートが語るＧＳ業界の真実には自分の耳を疑ってしまうほどだった

魔理の驚きにピートは少し意外そうな表情を見せつつも説明するが、結局はオカルトＧメンが公益性や命の危険のない依頼は引き受けないと言うこと

そして依頼料金を払えない相手には唐巣の教会を尋ねるように勧めるのだと教えていく


「そんな……オカルトＧメンは弱者の味方じゃないのか？　テレビとかでやってるじゃないか！！」

割と業界人ならば知ってる事実なだけに魔理が知らない事にピートは不思議そうだが、魔理はかなりショックを受けてるようだ


「オカルトＧメンも頑張ってますよ。　ただ正式な捜査官は二人ですからね。　実際に弱者を助けてるのは先生のような心あるＧＳ達ですよ」

六道女学院の霊能科の魔理がオカルト業界の常識すら知らない事実には、逆にピートが驚いていた

実際ピートは魔理をよくは知らないが、まさかそこまで何も知らないとは思わなかったらしい


「そろそろ行こうか。　ピート君は一文字君が危険にならないように頼む」

魔理の驚きが収まらぬままだが、依頼人と話を終えた唐巣が戻って来たことでいよいよ除霊が始まることになる

唐巣は魔理の安全の為に、ピートを魔理に付けて自身が除霊するつもりらしい


「ここは私が一昨日に下見をしたので危険はないと思うが、油断はしないでくれ。　危険だと感じたら私の事に構わずすぐに逃げるんだよ」

見学だけだと言いつつも、唐巣は本当に最低限の心得を魔理に教える

正直唐巣は魔理の実力や知識にかなり疑問を抱いていた

見た目や態度からも感じたことなのだが、中途半端なままで基礎すら知らない可能性があると感じていたのである


「はい」

オカルトＧメンの話に驚きショックを受けていた魔理だが、流石に除霊が始まるとなれば気持ちを切り替えて真剣な表情になっていた

まあケンカ慣れしてるだけに、その辺りの気持ちの切り替えは割と出来るようである