嵐を呼ぶ再会

次の日学校が終わってすぐに教会へ向かった魔理だったが、直前に近くの公園で髪型を直していた

元々くせっ毛気味だった髪型をいつもはわざわざセットで固めて立てていた魔理だったが、学校で直すのは恥ずかしかったのだ


(見学させて欲しいだけなのに……)

実は魔理は見学だけで髪型云々言われた事には多少不満を感じている

元々見た目で判断されるのが嫌いな魔理にとっては、人格者と評判の唐巣までもが見た目でダメ出した件には納得のいかない部分があった

霊能には真剣に向き合ってるとの自負もあるだけに、中身を見てほしいとの想いが強い


「いらっしゃい、一文字君。 ところでその木刀は何だね?」

髪型を直した魔理はそのまま唐巣の教会に向かうが、出迎えた唐巣は魔理が持参した木刀を不思議そうに見ていた


「あっ、これはあたしが除霊に使ってる物で一応持参したんだけど……」

唐巣に対して学校の授業や除霊実習で用いる木刀だと説明する魔理だが、唐巣の表情が一瞬引き攣ったのは気付かない


「見たところただの木刀のようだが? 除霊に用いるなら特殊な処置が施されてる霊具の木刀でなくてはあまり意味がないのだが……」

「本当は神通棍がいいんだろうけど、あたしお金なくて」

普通の木刀で除霊するつもりの魔理に唐巣は複雑そうな表情を浮かべるが、霊具を買うお金がないと魔理が告げると仕方ないかと無言になる

実は魔理とて好きで木刀を使ってる訳ではなかった

高価な霊具を買う余裕が魔理にはないのである

仮に初心者の練習用神通棍でさえ、数十万はするのだ

六道女学院の高価な授業料に加え最低限の教材費を払うだけで精一杯であり、個人的に使用する神通棍などの霊具を買うお金がない


「そうか。 武器が必要なタイプの霊能者は大変だからね。 私は基本的に武器を使わないのでいいのだが……」

才能ある一般人がGSになる上での最大の障害はやはりお金だった

どこの世界でも一流やプロになるにはかなりお金がかかるが、オカルト業界はその比ではない

神通棍や破魔札などのアイテムを使用した除霊が全盛期の現代において、GSを目指す者の最も大きな障害は修行にかかる費用である

合格率の割に費用が高いため割に合わないのだ

これは霊能者への弟子入りや除霊事務所で働く場合でも同じで、令子やエミのような一流はともかく中小の事務所では見習いの道具代も馬鹿にならないため自腹なとこもあるくらいだった

一獲千金を目指して挑戦する者の大半が辞めていくのも仕方のないことである


(木刀にあの髪型じゃ間違っても霊能者に見えないな)

仕方ない理由があるとはいえいつもの魔理の髪型に木刀では、まるで一昔前のドラマのヤンキーそのものだった

この時唐巣は魔理の霊衣を知らないためまだいいが、魔理の霊衣を知れば見学などさせないで帰したかもしれない

それだけ魔理は異質な存在だった

お嬢様学校の六道女学院に魔理のようなタイプが居る事自体が稀だし、そもそも態度や見た目で霊能を舐めてると受け取っても仕方ないと唐巣は感じてしまう


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