嵐を呼ぶ再会

さて高校生の夏休みも終わり愛子と小鳩のバイトは一旦終了したが、二人は土日だけの新しい契約をエミと交わしていた


ちなみにエミの事務所は基本的に不定休である

元々GS事務所は必ずしも土日が休みだとは限らないし、客の要望によって土日に仕事をすることも割と珍しくない

エミもまた土日は休まずに平日に週休二日ほどをスケジュールを調整して不定休で休んでる

愛子と小鳩の仕事は土日の電話番と来客の対応と書類整理などの雑務だった

夏休みは常に二人で仕事をしていた愛子と小鳩だが、仕事が慣れた事もあり九月からは一人で土日を交互に仕事をしていく事になっている


そんな二人に対するエミの評価はやはり悪くない

それほど素晴らしい成果を出す仕事は出来ないが、二人は何より真面目で確実な仕事をしていたのだ

加えて女の子らしく細かい場所に気が利くため、事務所の掃除などはタイガーと違い完璧だった

今のところ愛子も小鳩も明確な夢や希望がないため、エミは卒業後の契約を真剣に考えている



一方夏の間の六道冥子だったが、以前行った老人ホーム訪問が今も続いていた

相変わらず冥子本人はボランティアの意味をイマイチ理解してないが、自分が行くと喜ばれる事は単純に嬉しいらしく今も続く原因になっている

芯の弱さと飽きっぽい性格から冥子の老人ホーム訪問が続いてる事に母親である冥菜は驚きを隠せないが、それよりも何よりも冥子が自分なりに何かを頑張ろうと考えいる事実に驚いていた

子供っぽさは相変わらず変わらないが、他者に興味を持ち何かしてあげたいと考えてるだけで冥子にしては大きな変化なのだ

現状で冥菜はそれ以上の何かを冥子にさせるつもりはないが、この変化をそのまま成長に繋げたいとは考えている

そんな冥菜の考えなど全く知らない冥子だが、広がった交遊関係が彼女を確実に成長させていた

最近の交遊関係は横島や令子を始め個性溢れる者が多いだけでなく、老人ホームの老人達もまた冥子に多大な影響を与えている

人生経験が豊富な彼らとの交流が、冥子に最も不足していた人との関わりを教えていたからなのだが……

元々の性格と容姿ゆえにあまり成長が他者から見えない冥子だが、その変化はこの夏も止まることなく静かに歩みを続けていた



そして唐巣だが、彼はGS協会役員就任以来多くの人と積極的に会って話を聞いていた

一部の幹部は現状のGS協会を唐巣が改革しようとするのではと予想していたようだが、現状で唐巣は自ら何かを変えようとはせずに協会職員やGS達と話をする機会を設けるのみである

その心中を計り兼ねる者も多少居るが、唐巣は黙々と仕事の傍らで人と会うだけだった

唐巣の心中を確実に理解してるのは、弟子のピートや冥菜や美智恵などの僅かな者達だけだろう

明確な方針や改革など一切口にしない唐巣は、ただただ組織を理解してGS達の状況を知ろうとしてるだけである

少しでも組織や協会の繋がりを強くして風通しをよくする

唐巣がしてるのはそんな当たり前のことだった


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