過去と現在が交差する時

「今のあのボウズを怒らせていいことないアルよ」

ぽつりと呟いた厄珍の本音は疲れたようなものだった

アシュタロス戦やその後の横島の状況の変化など、厄珍は全て知っている

きわどい商売をする厄珍にとって情報こそ何より価値があるのだから

そんな厄珍は横島を取り巻く環境をある程度理解しており、両親や小竜姫が横島を守る為にかなり行動を起こした件ももちろん知っているのだ

現在の横島のオカルト業界への潜在的な影響力には、一番敏感に反応してるかもしれない

しかも魔鈴が厄珍に卸してる魔法薬は人気商品だった

比較的効果が薄く安全な物ばかりだったが、心霊治療関係の薬などはそれこそ在庫がすぐになくなるほどの人気である

主に客はGS関係者だったが、魔鈴しか作れない魔法薬の売れ行きは最高だった
正直厄珍にとって、横島に嫌われていい事などなかったのである

まあその割に態度がイマイチだったのだが、それはあまり態度を急に変えない厄珍の作戦だった

突然態度を180度変えても不信感を買うだけなのだから、それなりの態度でごまかしたのである


「しかし何に使うアルかね? 引退したと聞いたアルが……」

そんな厄珍も横島が買った品物を思い出して首を傾げるばかりだった

正直一般人には不要な物だし、横島に必要な物には思えなかったのだ


「まあ、いいアル。 最高級品なのは本当だし問題はないはずネ」

しばし考え込んでいた厄珍だったが、問題さえなければ関係ないだろうとテレビに視線を戻す

厄珍は相変わらずだった



「それは……」

一方自宅に帰った横島はさっそく買った物を魔鈴達に見せるが、魔鈴が驚きの表情を浮かべた以外はタマモとシロや両親が不思議そうに首を傾げるくらいである


「それは霊視ビデオカメラですか?」

「やっぱ魔鈴さんは知ってたんっすね。 前に厄珍堂に行った時に見たの思い出して買って来たんっすよ」

横島が買って来た物は、魔鈴が言う通り霊視するビデオカメラである

元々物質を写す普通のカメラは、幽霊などの霊的な存在との相性が悪く写すのに向いてないのだ

たまに写っても一部だけ写ったり変に写ったりする事はよくあるが、幽霊などを綺麗にしっかり写すのは非常に難しい

霊能者には念写などの幽霊を写す技はいくつかあるが、あれはあれで結構難しくもちろん横島には出来ない

霊視ビデオカメラとは、元々は霊障の調査や除霊記録用に用いるカメラである

基本的には調査専門のGSが調査報告書などを作成する時に用いたり、良心的なGSは高額な除霊の際には除霊の様子を記録してクライアントに見せたりするのに用いる事が一般的だった

ちなみにGS試験の記録用カメラも同じ霊視ビデオカメラを使っている


魔鈴に両親との思い出を残してやりたいとずっと考えていた横島は、この霊視ビデオカメラを使って記録を残そうと考えたのであった

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