過去と現在が交差する時

次の日、朝食を食べた横島は一人で出かけていた

魔鈴とタマモとシロは相変わらず両親と話をしたり何かを教わったりしていたのだが、横島は突然用事があると言い出して一人で出かけていたのである


「ボウズが来るとは珍しいアルな。 美人捕まえて引退したのに何の用アルか?」

そんな横島が訪れたのは、相変わらず怪しげな品物がズラリと並んでる厄珍堂だった

店主である厄珍は相変わらず暇そうに怪しげなテレビを見ていたが、横島を見ると僅かにニヤリとして嫌みにも聞こえそうな言葉を口にする


「今日は一応客なんだけどな。 まあ、いいや。 探してる物があるんだ」

美神事務所時代と同じように対応する厄珍に横島は何故か僅かな懐かしさを感じてしまい、以前の自分と比べて今の自分がいかに幸せかシミジミと感じていた


「それならば現物があるが……、高性能品は高いアルよ」

「いくらだ? あんまり高いなら分割にして欲しいな」

頼んだ品物を即座に自慢げに見せる厄珍に、横島は胡散臭そうな表情をするがそれでも買うつもりらしい


「一千万!……と言いたいところアルが、ボウズとワタシの仲だし三百万でいいネ」

「うーん、品質は大丈夫か? 欠陥品だと困るんだが……」

意味深な笑みを浮かべたまま突然高いのか安いのか分からない値段を言われた横島は、不安そうに厄珍に尋ねる

過去にいろいろあっただけにイマイチ信頼出来ないのだ


「それは本物の高性能品ネ。 と言うか、ボウズに不良品を渡すと後が怖いアル」

「はあ? お前なら俺を実験台にするくらいなら平気でやりかねないだろ?」

「ワタシは馬鹿じゃないアル。 竜神小竜姫と親交があるボウズに何かあれば後が怖いネ」

疑うような横島に厄珍は、若干微妙な表情を浮かべて裏などないと告げる

そんならしくない厄珍に横島は半信半疑なのだが、厄珍は小竜姫の名前を出してまで騙してないと言う


「なんで小竜姫様が出て来るんだ?」

「隠しても無駄アルよ。 ボウズの後ろ盾が妙神山の小竜姫なのは有名ネ」

「確かに小竜姫様のとこには遊びに行ってるけどさ……」

意外な場所で出た小竜姫の名前に横島は不思議そうに首を傾げるが、厄珍は横島と小竜姫の関係は深く騙すはずがないと言い切る


「これは三百万が仕入れ値アル。 仕入れ値でいいからワタシの悪口を、小竜姫や魔鈴ちゃんに言うのは止めて欲しいネ」

「うーん、とりあえず分かった。 手持ちがあんまりないから分割でいいか?」

妙に素直と言うか下手に出る厄珍に横島は拍子抜けしてしまうが、品質が大丈夫ならだ問題ないだろうと品物を買うことにする

そのまま分割の契約書を交わして品物を持って帰る横島だったが、横島が居なくなると厄珍は正直ホッとしたようなため息をはく



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