「今日は賑やかだな」

その後も賑やかに料理を続ける魔鈴達だったが、そんな時に帰宅したのは雪之丞だった

雪之丞は横島が連絡した訳ではなく予定通りの帰宅なのだが、魔鈴の両親の幽霊に若干驚いた後は特に気にもせず何も聞かぬままである

横島と魔鈴ならば幽霊と一緒に居ても何の違和感もないらしい

その後は横島が呼んだ愛子・唐巣・冥子がやって来るが、他の者は都合が付かなかったようだ

いつもは集まるタイガーとピートですら、里帰り中で無理だったようである


「よう、エミさんの事務所はどうだ？」

「楽しいわよ。　前に横島君の仕事手伝った時よりは落ち着いた感じかな」

珍しいメンバーが集まった中、話題の中心は最近エミの事務所でバイトを始めた愛子だった

横島が様子を尋ねると、愛子は思ったほど忙しくないと語る


「ずるいわ～、今度家にも遊びに来てね～」

愛子が仕事を始めたと聞いて妙な反応を示したのは冥子だった

なにやら自分だけのけ者にされたの勘違いをしたらしく、不満げな冥子はしきりに愛子を自宅に誘っている


「うーん、冥子ちゃん家はでかいからな～　一回見学に行く価値ならあるかもな。　下手すると家の中で迷子になりそうだけど……」

自宅に誘う冥子に愛子は別に遊びで仕事を始めた訳でないので反応に困るのだが、横島は割と気にしてないようで一回遊びに行こうかと簡単に話してしまう


「じゃあ、みんなで来てね～　冥子待ってるわ～」

横島の発言がよほど嬉しかったのかニコニコと愛子に抱き着く冥子の姿は、尻尾をブンブンと振って喜ぶ子犬のようであった



さて横島達がそんな会話をしてる間に夕食の用意は着々と進んでいた

料理は母親の料理と魔鈴の料理が半々くらいである

楽しげに会話をしながら料理する姿は親子と言うよりは姉妹に見えるほどだ

そのまま夕食になるのだが、この日の夕食は前日と違い本当に賑やかで楽しい夕食になる

魔鈴の両親の幽霊がお盆で帰って来たと聞いた唐巣と愛子は若干驚いていたが、冥子は全く気にならないらしく普通に挨拶してる姿は冥子らしい姿だと言えよう

途中でお酒なども少し入った食事はゆっくり長く続くことになるが、総じて言えるのは死者と生者の壁など全くなかったことか

それはある意味理想のお盆の一つなのかもしれない



「しかし、魔鈴君は本当に幸運だったね」

食事も終わり唐巣や愛子達は帰路に着くが、一同は冥子の好意で迎えの車で送ってもらっていた

そんな車の中で唐巣はぽつりと今日の事を呟いていく


「霊能力は必ずしも幸せに繋がるとは限らないからね。　亡くなったご両親と再会して直接会話出来るなんて、霊能者にとっては最高の幸せかもしれないな」

霊能力があるがゆえに苦労した者や苦しんだ者を多く知る唐巣は、今日の魔鈴の幸せそうな姿に心が暖かくなる気持ちだった

日頃何かと苦労が多い魔鈴が、今回の件で少しでも報われればいいと唐巣は密かに願っていた