過去と現在が交差する時

さて両親と出掛けた魔鈴は両親の幼い頃に住んでいた場所などを巡って昔話に花を咲かせていたが、お昼まで後少しというところで遠くから何かが猛スピードで近寄って来る


「魔鈴どの~!!」

「あらシロちゃん、早かったわね」

土煙を巻き上げて猛スピードで走って来たのは、元気が有り余るような表情のシロだった


「長老様に早く帰って、仕事を頑張るように言われたんでござる。 もしかして仕事中だったんでござるか?」

魔鈴に人狼の里での事を話すシロだったが、ふと隣に居る魔鈴の両親の幽霊に気付く


「仕事じゃないのよ。 二人は私のお父さんとお母さんなの」

「おおー! 魔鈴殿のご両親でござったか! 拙者犬塚シロと申す。 魔鈴殿にはいつもお世話になってるでござる」

両親の幽霊を若干不思議そうに見るシロに魔鈴が両親だと伝えると、シロは驚きと共に満面の笑顔になり両親に挨拶をする

無邪気な笑顔で嬉しそうに挨拶するシロの姿に、魔鈴と両親も思わず笑みを浮かべてしまう


「はじめまして、いつもめぐみがお世話になってるわね。 貴女にも会いたかったわ」

見た目はともかく表情に幼さの残るシロを、両親は微笑ましく見つめている

ポジティブで明るいシロのエネルギーが、魔鈴達にとってかけがえのないモノになってると両親は知っているのだ


「そうだわ。 一緒にお昼にしましょう。 私達は食べれないから、めぐみが一人じゃ可哀相だったの」

そのまま両親と会話を交わすシロだったが、母親の勧めで一緒に昼食を食べに行く事になる

両親が一般人には見えない為に、魔鈴が一人で店に入るには少し入りにくかったのだ



「いただきます」

そのまま魔鈴達が行ったのは焼肉屋だった

むろんシロのリクエストにより焼肉にしたのだが、久しぶりなので魔鈴の両親もまた楽しそうだ


「しかし亡くなったご両親が帰って来るとは運がいいでござるな。 人狼の里にもご先祖様が帰って来る事があるみたいでござるが、知ってる身内に会える事は滅多にないと聞いたことがあるでござる」

山盛りのご飯とお肉をもぐもぐと食べていたシロだったが、ふいに死者が現世に戻る事を話し始めた

寿命が長い人狼族でも祖先の霊が帰って来る事があるらしく、何年か何十年かに一度の割合で先祖が帰って来るらしい

ただ帰って来る確率はかなり低いらしく、帰って来れる事はかなり珍しいとの事だった


「そうですね。 実際にこうしてお父さんとお母さんに会えて話せた事は奇跡みたいなものかもしれません。 嬉しい反面、私だけいいのかとも考えてしまいます」

「魔鈴殿はいつも頑張ってるでござるから、きっとご褒美なのでござるよ!」

亡くなった人に会いたいのは決して自分だけではないと理解してる魔鈴は少し申し訳なく思うが、そんな魔鈴にシロは魔鈴ならば当然のご褒美だと言い切る


「シロちゃん……」

両親に会いたいのはシロも同じなのにも関わらず、魔鈴の再会を自分の事のように喜ぶシロに魔鈴と両親は熱い想いで胸がいっぱいだった


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