過去と現在が交差する時
一方魔鈴の寝室では母親と魔鈴が二人で話をしていた
こちらは特に変わった話ではないが、二人は離れていた距離を埋めるように互いの過去の話などを続けている
「私ね、めぐみに家族の温もりを与えてあげれなかったこと……ずっと後悔してた」
話が一段落した頃、魔鈴の母親は僅かに表情を曇らせて自身の中にあった後悔を語り始めていく
これまでの魔鈴の人生は不幸では無かったが、決して幸せとも言えなかった
霊能力に目覚めたのが両親への想いからならば、霊能にのめり込んだのも両親への想いがどこかにあったのは確かなのである
普通の家族の幸せを知らない娘に、両親はずっと不安と苦悩を抱えて見守っていたのだ
「本当にいい子達ね。 めぐみの悲しみを自分の悲しみのように受けとめて、喜びを自分の喜びのように感じてた。 それはとっても素敵なことよ」
肉体を持たぬはずの魔鈴の母親の目には、何故かうっすらと涙が浮かんでるように見えていた
家族の温もりを知らぬ魔鈴に家族の温もりを与えていた横島とタマモに、魔鈴の母親は言葉に出来ないほどの想いを感じている
「めぐみ……、貴女は貴女だけの家庭を築きなさい。 それが例え人の価値観では理解出来ない家庭でも私は応援するわ」
優しく微笑んだ母親は、そっと魔鈴を抱きしめ囁くように言葉を紡ぐ
「お母さん……」
「私達は何があっても貴女達の味方よ。 思うままに生きなさい」
母親の言葉に驚く魔鈴に、母親は力強い声で魔鈴の中にある苦悩に僅かな光と希望を与える
それは横島と魔鈴にとって最も大切な存在であるルシオラに関しての言葉だと、魔鈴は直感的に理解していた
「両親か……」
同じ頃、タマモは自室で一人考え込んでいた
タマモには前世はあれど両親はいない
殺生石より復活したタマモは、厳密には前世である玉藻前と同一人物と言える存在なのだ
従って前世の記憶がほとんどないタマモは、自分に両親が居たのかすら覚えてない
「人間の親子の絆は強いわね。 でもこの短い時間で魔鈴さん達は、何を得るのかしら?」
タマモ自身は両親の存在など考えたこともないが、魔鈴とその両親の姿を見ていると思わず自分の両親のことを考えてしまう
遠い記憶の彼方にある微かな母親の温もりに、タマモはこれが魔鈴にとって巣立ちの時なのではと本能的に感じていた
「部外者の私が出来ることは……」
魔鈴の巣立ちの時に自分は何が出来何をするべきなのか、タマモは一人考えていく
しかしタマモはこの時一つだけ気付いて無かった
自身の中にある横島や魔鈴への感情が、すでに友人や仲間を越え始めてることに……
そして決して切れる事のないその絆は、人が家族と呼ぶ絆である事実にタマモは気付いてない
奇跡に等しいくらい貴重なその夜は、それぞれの強い想いを抱いたまま更けていく
こちらは特に変わった話ではないが、二人は離れていた距離を埋めるように互いの過去の話などを続けている
「私ね、めぐみに家族の温もりを与えてあげれなかったこと……ずっと後悔してた」
話が一段落した頃、魔鈴の母親は僅かに表情を曇らせて自身の中にあった後悔を語り始めていく
これまでの魔鈴の人生は不幸では無かったが、決して幸せとも言えなかった
霊能力に目覚めたのが両親への想いからならば、霊能にのめり込んだのも両親への想いがどこかにあったのは確かなのである
普通の家族の幸せを知らない娘に、両親はずっと不安と苦悩を抱えて見守っていたのだ
「本当にいい子達ね。 めぐみの悲しみを自分の悲しみのように受けとめて、喜びを自分の喜びのように感じてた。 それはとっても素敵なことよ」
肉体を持たぬはずの魔鈴の母親の目には、何故かうっすらと涙が浮かんでるように見えていた
家族の温もりを知らぬ魔鈴に家族の温もりを与えていた横島とタマモに、魔鈴の母親は言葉に出来ないほどの想いを感じている
「めぐみ……、貴女は貴女だけの家庭を築きなさい。 それが例え人の価値観では理解出来ない家庭でも私は応援するわ」
優しく微笑んだ母親は、そっと魔鈴を抱きしめ囁くように言葉を紡ぐ
「お母さん……」
「私達は何があっても貴女達の味方よ。 思うままに生きなさい」
母親の言葉に驚く魔鈴に、母親は力強い声で魔鈴の中にある苦悩に僅かな光と希望を与える
それは横島と魔鈴にとって最も大切な存在であるルシオラに関しての言葉だと、魔鈴は直感的に理解していた
「両親か……」
同じ頃、タマモは自室で一人考え込んでいた
タマモには前世はあれど両親はいない
殺生石より復活したタマモは、厳密には前世である玉藻前と同一人物と言える存在なのだ
従って前世の記憶がほとんどないタマモは、自分に両親が居たのかすら覚えてない
「人間の親子の絆は強いわね。 でもこの短い時間で魔鈴さん達は、何を得るのかしら?」
タマモ自身は両親の存在など考えたこともないが、魔鈴とその両親の姿を見ていると思わず自分の両親のことを考えてしまう
遠い記憶の彼方にある微かな母親の温もりに、タマモはこれが魔鈴にとって巣立ちの時なのではと本能的に感じていた
「部外者の私が出来ることは……」
魔鈴の巣立ちの時に自分は何が出来何をするべきなのか、タマモは一人考えていく
しかしタマモはこの時一つだけ気付いて無かった
自身の中にある横島や魔鈴への感情が、すでに友人や仲間を越え始めてることに……
そして決して切れる事のないその絆は、人が家族と呼ぶ絆である事実にタマモは気付いてない
奇跡に等しいくらい貴重なその夜は、それぞれの強い想いを抱いたまま更けていく