過去と現在が交差する時

その後墓参りを終えて普通に帰宅して行った横島達だったが、店の裏口から店内に入るとタマモは静かに誰も居ない場所を見つめていた


「二人とも普通に霊視してみて」

帰宅した途端妙な事を言うタマモに横島と魔鈴は首を傾げるが、魔鈴は何かを感じたのか恐る恐る霊視してみる


「お父さん……、お母さん……」

今までに見たことないほど驚きに満ちた表情の魔鈴に、横島は慌てて目を細めて霊視していく


「マジっ!?」

「本人達よ。 お墓からずっと私達と一緒に来たの」

お盆には祖先の霊達が帰って来るとは先程聞いたが、まさか魔鈴の両親が居たとは夢にも思わなかったのだ

それだけお盆に地上に帰って来るのは稀な事だという


「めぐみ、大きくなったな……」

「私達はずっと貴方を見守ってたのよ」

驚きのあまり震えが止まらない魔鈴に両親は穏やかな微笑みを浮かべて言葉をかけていく


「ああ…… 私…… 私……」

ボロボロと涙をこぼし言葉が上手くでない魔鈴を、両親はなだめるように優しく抱きしめる

それは肉体の温もりはないが、確かな魂の暖かさのある抱擁だった



「俺さ、今日ほど霊能力の有り難みを感じた日はないかもしれん」

一方横島はタマモに連れられて、ひと足に異界の自宅に戻っている

せっかくの再会に自分達は必要ないと思ったタマモが気を利かせて、横島を引っ張って先に戻って来たのだ

子供のように泣きじゃくる魔鈴に横島は初めて霊能力の真の価値を知った気がしていた


「昔はさ…… 美神さんに憧れて、霊能力に憧れてた時期もあったんだ。 これも《栄光の手》なんて名前を付けて、俺もいずれ美神さんみたいに……なんてな」

右手に霊力を集中して栄光の手をタマモに見せた横島は、ふと昔の事を語り始めた

元々横島が令子の元に居たのは色香に惑わさたのが理由だが、その強さや華麗さに憧れたのもまた事実である

しかしヘタレで不良とのケンカでさえ逃げ出していた横島は、まさか自分が本当に霊能者になれるとは夢にも思わなかったのだ


「別に霊能力を持った事に後悔してる訳じゃないけどさ、霊能力を持って本当によかったと思った事はなかったかもしれないんだわ」

少し前の横島にとって、霊能力は令子の代名詞であり霊能者といえば令子をイメージしていた

横島自身、今だに心のどこかでそのイメージが残っている気がする

霊能力を持った故に出会った者達もおり後悔はしてないが、霊能力を持ってこれほどよかったと感じた事は初めてな気がしていた


「私は横島が霊能者でよかったと思うわよ。 少なくとも私は出会ったのが他の人間なら間違いなく殺されてたもの。 貴方が救った命の数だけそう思ってる人が居るはずよ」

相変わらず表情を変えないタマモだったが、その言葉は表情以上に温かいものである

きっと横島は気付かぬ場合で誰かを救い感謝されてるはず

タマモはそんな確信めいた想いを強く感じていた

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