過去と現在が交差する時

一方雪之丞は母親の故郷である町を訪れていた

毎年墓参りは欠かさなかったが、今年は今までと違う想いを抱えている


「ママ、GS試験に受かったよ。 随分時間かかったけど、ダチのおかげでようやく一歩進めた」

母親の墓の前でGS試験に受かった報告をする雪之丞は、僅かに微笑んでるようであった

かつて自分を産んで亡くなった母親に強くなると誓った雪之丞は、この年までその為だけに生きて来た

強さを求め得られた力だけが、亡き母親へと近付き伝わるような気がして……


「今まで強くなった先なんか考えた事もなかったけど、最近この力をどうするべきなのかずっと考えてるんだ」

答えの返ってこない墓石に淡々と語りかける雪之丞の姿は、過去の彼を知る者ならば驚くほど穏やかだった

今も力を求める気持ちは変わらないが、だが最近の雪之丞は得た力の先をずっと考えていたのである

周りを見渡せば自分よりも強い存在が多く居る現在の雪之丞は、強さの先にあるモノを考えるには十分な環境だった


「俺は今、師匠と呼ぶべき存在が二人いる。 一人は戦いの師匠でもう一人はGSの師匠だ。 二人は性格も考え方も強さも全く違うけど、どこか確かな自分を持ってるんだ。 俺はまだそれが無いけど……、いつかそいつを見つけたい。 その為にも俺はGSになるつもりだ」

雪之丞が言う戦いの師匠とは天狗の事であり、GSの師匠とは魔鈴の事だ

現在も雪之丞は週一くらいで天狗の元に通い戦いを挑んでいる

天狗は何かを教える事は全くないが、戦いにおいては自身の技術を惜しみなく見せていた

そんな天狗を雪之丞は勝手に師匠だと考えて、技を盗み己に磨きをかけている

ちなみに横島に関しては魔鈴と一緒に暮らして以来魔鈴により制限がかけられて、行く回数が減り現在は月に二回くらいのペースで通っていた

横島の場合は文珠で転移出来るため、移動にかかる時間がないために僅かな空き時間で行き短時間の戦いを挑んでいたのだ

加えて実は雪之丞の天狗の元へ行く回数も、魔鈴により制限されている

まあ雪之丞の場合は強制はしてないのだが、体調やGSの修行や勉強のスケジュールを考えて週一くらいが理想だとアドバイスしていた

雪之丞はその言葉をそのまま受け入れて現在週一くらいのペースになっている

魔鈴はあくまで友人として雪之丞に対応して教えているが、雪之丞はこちらも半ば弟子のつもりだった

私生活などは別にしても、修行や勉強に関しては横島が驚くほど素直に魔鈴の言葉に従っている

その辺りの区別は横島や魔鈴よりも雪之丞がしっかりしているかもしれない


結局雪之丞はこの日は、GSになる事を母親に報告して帰っていく

まだ明確な未来は見えてないが、魔鈴・唐巣・エミなどに師事を受けている雪之丞はGSになる未来を意識して見つめ始めていた

この時母親の墓がある寺の住職が、墓の前に立つ雪之丞の姿に驚き見つめていたという

それは久しぶりに見た雪之丞が、まるで別人のように大人になっていたからに他ならない

雪之丞の亡き母親を知る住職は、その姿に安堵していたという


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