過去と現在が交差する時

さて他の者達のお盆だが、おキヌは氷室家に帰省して墓参りをしていた

前回帰省した時と比べると幾分元気になったおキヌに養父母は安堵したが、同時に相変わらず悩み苦しんでる姿に心を痛めてしまう


「私ね。 最近ようやく生きてるんだなって、実感してるのかもしれないって思うの」

義理の姉であるさなえと近況を話していたおキヌは、ふと最近の気持ちを語っていく


「美神さんも横島さんもさなえお姉ちゃんも、みんな大変な事あったり辛い事あったわ。 だけど私は生き返ってからずっと幸せだけだったの。 美神さんの苦しみも横島さんの苦しみも私は全然理解して無かった。 だから……」

苦悩や後悔の日々が続いていたおキヌだが、最近になりようやく令子や横島の苦しみの一端を理解した気がしていた

正直言うと令子の孤独も横島の貧乏も、おキヌはあまり理解出来ていなかったのだ

令子が寂しがり屋なのも横島がお腹を空かせて苦しんでいたのもおキヌは見ていたが、あまり実感がなく本当の意味で理解してなかったのである


「おキヌちゃん……」

さなえはおキヌにかける言葉が浮かばないまま見つめるしか出来なかった

苦しみ悩む中でおキヌは必死にもがいて答えを見つけようとしている

そして……、今だに令子のみならず横島をも理解しようと必死に努力しているのだから


「いつか女華姫さまに会った時に、笑って話せるように私は生きていきたい」

悩みは消えず心の痛みも収まらないおキヌだが、そんな中でもおキヌは希望を失って無かった

自分の為に身分を捨て氷室神社と子孫を残してくれた女華姫に、いつか本当の意味で笑って会いたい

氷室神社に帰省したおキヌは、そんな気持ちを心に強く刻んでいた



「休憩にしましょうか。 お茶入れてくれる?」

一方小笠原GSオフィスでは、この日もエミと愛子が事務所で仕事をしている

タイガーと小鳩は墓参りを理由に休んでいるがエミは外せない仕事が一件入っており。愛子は例によって学校が無人になるこの日は暇だったのだ


「お盆も仕事だなんて大変ですね」

「別に休んでもいいんだけど、お盆は霊障やらつまらないトラブルで相談の電話が多いワケ。 一日に何回も携帯に電話が来てたんじゃ休みにならないから、仕事した方が気持ち的に楽なのよ」

愛子の入れたお茶で休憩する二人だったが、朝から数件の問い合わせや相談があり平日に比べれば忙しい

エミとしては休んでもいいのだがGSも客商売なのに変わりはないし、お盆の忙しい時期に休むのはあまり客にいい印象を与えないのだ

休みにしても携帯にくる電話は無視出来ないし、何回も仕事の電話が来るくらいなら仕事にした方が楽だったらしい


「それにしても祖先の霊を悪霊扱いは酷いですね」

「それは毎年よくある相談なワケ。 最近は霊を見れば悪霊だと勘違いする馬鹿が多いしね。 結局普通の人間から見たら区別出来ないワケよ」

この日来た相談は常連からで家の中に悪霊が現れたという相談だったのだが、エミが駆け付けるとお盆で地上に降りて来た祖先のだったのだ

そんなオチのような話を聞かされた愛子は驚き信じられないようだった

日頃から浮遊霊を悪霊と勘違いする件はたまにあるが、祖先の霊を勘違いする依頼はやはりGS業界ではこの時期有名な出来事だったのである


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