過去と現在が交差する時
同じ頃、成田空港にはある人物が到着していた
分厚い鉄仮面を被ったその姿に周りの人間は避けていくが、本人はあまり気にした様子はない
「お帰りなさい、公彦さん」
分厚い鉄仮面の男を出迎えに来ていたのは美神美智恵、そしてこの鉄仮面の男は美神公彦といい令子とひのめの父親である
若い頃に事故に遭いその後遺症で精神感能力を持ってしまった公彦は、分厚い鉄仮面で頭を覆わないと無意識に人が発する精神波から相手の思考の全てが見えてしまうほどの能力者だった
「相変わらず日本は人が多いな」
「これでも都内は少ない方よ。 この時期は帰省してる人が多いもの」
美智恵の運転する車で空港を離れる公彦だったが、日本の人の多さに思わずため息をはいてしまう
他人の思考など見てもいい事などまるで無い
相手の感情まで見えてしまう公彦は、当然負の感情などもモロに受け止めざるおえないのだ
それは決して幸せな能力では無かった
「令子とひのめは元気か?」
「ひのめは元気よ。 でも令子は……」
娘達の近況を尋ねる公彦に美智恵の表情が曇る
何も分からないひのめは元気にすくすくと育っているが、令子の現状はやはり美智恵も頭を悩ませていたのだ
「そうか……」
公彦は複雑な表情をしたまま、それ以上何も尋ねる事は無かった
美智恵とは頻繁に連絡を取っていた公彦だが、令子との関係は相変わらず上手くいってない
心の中では令子を心配しているのだが、その能力ゆえに娘と関わるのを避けて来たのだから
そのまま美智恵と公彦が向かったのは唐巣の教会だった
相手の全てが見える公彦にとって友人は唐巣だけである
かつては友人達も居たが、精神感能力が原因で全て疎遠になった
全てが見えると理解して付き合ってくれた友人は唐巣だけだったのだ
「久しぶりだね公彦君。 元気そうで何よりだよ」
「娘がいろいろとご迷惑をかけたようですいません。 貴方には返しても返しきれない恩があるのに……」
久しぶりの友人である公彦を唐巣は温かく迎えたが、公彦は教会の入口で深く頭を下げて謝罪を始めた
人の心までが見える公彦は人の優しさには特に敏感だった
唐巣の優しさに甘え娘を預けた公彦は、迷惑をかけた以上に申し訳ない気持ちでいっぱいだったのである
「そんな事はいいから入りたまえ。 久しぶりの再会なんだから、堅苦しい事はいいじゃないか」
申し訳なさそうな公彦の表情にも唐巣はあまり動じた様子はなく、普段と同じように公彦と美智恵を中に招き入れた
教会の奥の住居スペースに案内してお茶を出す唐巣だったが、久しぶりの友人との再会が嬉しそうである
「変わりましたね、神父」
唐巣の変化を公彦はすぐに気が付いていた
数年に一度会う程度の関係だったが、若い頃から唐巣を知る公彦にはその変化が驚きだったようだ
「そうかい? 最近たまに言われるけど、私にはあまり自覚はないんだよね」
「それほど希望を持った貴方を僕は始めて見ましたよ。 この仮面のおかげで思考はほとんど見えませんが、それでも相手が希望や絶望などを抱えてるのは見えてしまうんです」
相手の思考や心は仮面を被ればほとんど見えないが、漠然とした感情はやはり見えてしまう
公彦は唐巣が今までにないほど希望を抱えていたのに驚きを感じていた
分厚い鉄仮面を被ったその姿に周りの人間は避けていくが、本人はあまり気にした様子はない
「お帰りなさい、公彦さん」
分厚い鉄仮面の男を出迎えに来ていたのは美神美智恵、そしてこの鉄仮面の男は美神公彦といい令子とひのめの父親である
若い頃に事故に遭いその後遺症で精神感能力を持ってしまった公彦は、分厚い鉄仮面で頭を覆わないと無意識に人が発する精神波から相手の思考の全てが見えてしまうほどの能力者だった
「相変わらず日本は人が多いな」
「これでも都内は少ない方よ。 この時期は帰省してる人が多いもの」
美智恵の運転する車で空港を離れる公彦だったが、日本の人の多さに思わずため息をはいてしまう
他人の思考など見てもいい事などまるで無い
相手の感情まで見えてしまう公彦は、当然負の感情などもモロに受け止めざるおえないのだ
それは決して幸せな能力では無かった
「令子とひのめは元気か?」
「ひのめは元気よ。 でも令子は……」
娘達の近況を尋ねる公彦に美智恵の表情が曇る
何も分からないひのめは元気にすくすくと育っているが、令子の現状はやはり美智恵も頭を悩ませていたのだ
「そうか……」
公彦は複雑な表情をしたまま、それ以上何も尋ねる事は無かった
美智恵とは頻繁に連絡を取っていた公彦だが、令子との関係は相変わらず上手くいってない
心の中では令子を心配しているのだが、その能力ゆえに娘と関わるのを避けて来たのだから
そのまま美智恵と公彦が向かったのは唐巣の教会だった
相手の全てが見える公彦にとって友人は唐巣だけである
かつては友人達も居たが、精神感能力が原因で全て疎遠になった
全てが見えると理解して付き合ってくれた友人は唐巣だけだったのだ
「久しぶりだね公彦君。 元気そうで何よりだよ」
「娘がいろいろとご迷惑をかけたようですいません。 貴方には返しても返しきれない恩があるのに……」
久しぶりの友人である公彦を唐巣は温かく迎えたが、公彦は教会の入口で深く頭を下げて謝罪を始めた
人の心までが見える公彦は人の優しさには特に敏感だった
唐巣の優しさに甘え娘を預けた公彦は、迷惑をかけた以上に申し訳ない気持ちでいっぱいだったのである
「そんな事はいいから入りたまえ。 久しぶりの再会なんだから、堅苦しい事はいいじゃないか」
申し訳なさそうな公彦の表情にも唐巣はあまり動じた様子はなく、普段と同じように公彦と美智恵を中に招き入れた
教会の奥の住居スペースに案内してお茶を出す唐巣だったが、久しぶりの友人との再会が嬉しそうである
「変わりましたね、神父」
唐巣の変化を公彦はすぐに気が付いていた
数年に一度会う程度の関係だったが、若い頃から唐巣を知る公彦にはその変化が驚きだったようだ
「そうかい? 最近たまに言われるけど、私にはあまり自覚はないんだよね」
「それほど希望を持った貴方を僕は始めて見ましたよ。 この仮面のおかげで思考はほとんど見えませんが、それでも相手が希望や絶望などを抱えてるのは見えてしまうんです」
相手の思考や心は仮面を被ればほとんど見えないが、漠然とした感情はやはり見えてしまう
公彦は唐巣が今までにないほど希望を抱えていたのに驚きを感じていた