過去と現在が交差する時

それから数日が過ぎてお盆も間近になったこの日、魔鈴は横島達にお盆の予定を尋ねていた


「拙者は里に戻って父上と母上の墓参りをしてくるでござる」

「俺もママの墓参りに行ってくるから二日ほど空けるぜ」

お盆に予定があったのはシロと雪之丞で、共に両親の墓参りに行くらしい


「お土産よろしくな~ 俺達は久しぶりにゆっくりしてるか?」

墓参りに行く二人と対称的に、横島とタマモは全く予定が無かった

タマモは元々天涯孤独なため帰る実家もないので当然だが、横島の場合はわざわざ両親に会うつもりはないようだ


「横島さんはお墓参りなどはいいのですか? 私としては挨拶には行きたいのですが……」

お盆など自分には関係ないと言いたげな横島を、魔鈴は少し困ったように見つめていた

横島はいいかもしれないが、魔鈴としては最低限挨拶に行かねば立場がない

特に令子絡みで散々世話になっただけに行かないという選択肢は選べるはずがないのである


「爺ちゃんと婆ちゃんはどっちも元気らしいからな~ 親父達は知らんが俺はいらんだろ? 親父達にはよく顔を合わせるし、わざわざ挨拶に行く必要ないんじゃないっすか」

困ったような魔鈴に横島は少し考えてみるが、両親の田舎には高校入学以来行ってないので必要ないと考えていた

小中学校の頃は夏休みに祖父母の家に遊びに行ったが、墓参りに行くと言うより遊びに行く感覚が強かったのである


「相変わらず抜けてるわね。 魔鈴さんの立場上挨拶に行かない訳には行かないでしょ。 近くに住んでるからこそ挨拶に行く必要があるのよ」

どこか常識が抜けてる横島をタマモは呆れたように諭していく

嫁とまでは言わないが普段世話になってるだけに挨拶にいくのは当然なのだが、横島にとってはわざわざ行く必要があるとは思えないようだ


「そうか? まあ別に行ってもいいけど……」

「私の場合は横浜に両親の墓があるので墓参りに行くだけですから、その前に横島さんの両親にご挨拶に行きましょう」

あまり気が乗らない様子の横島だが、魔鈴やタマモに反対してまで意志を貫くつもりはないらしい

魔鈴は亡き両親の墓参りだけなので、大樹と百合子に挨拶に行くことを優先させるようだった


「魔鈴さんは親戚とか居ないんっすか?」

「日本に居るのは遠縁の親戚ばかりで、両親が亡くなってからは付き合いがないんですよ」

横島はふと魔鈴の親戚が気になり尋ねるが、日本には交流のある親戚は居ないようである

全く居ない訳ではないのだが両親が亡くなり魔鈴が施設に入ると、交流が無くなったようであった


「日本には?」

「母方の祖父がイギリス人なのでイギリスにも親戚はいますよ。 まあそちらも祖父母は無くなってますが、イギリスに居た頃はずっとお世話になってました」

日本にはと言う言葉に引っ掛かり不思議そうに尋ねた横島に、魔鈴は自分がクォーターだと告白していた

どうやらイギリスの親戚とは交流もあり、仲が悪くはないようだ


「へ~、だから髪の毛とかもブロンドのなんすね。 スタイルもいいですし」

クォーターと言う魔鈴の告白に横島は納得がいったようで、ウンウンと頷いている

魔鈴の髪の毛は天然のブロンドだし、加えて着痩せするタイプらしく、令子やエミに負けないスタイルなのは横島の密かな自慢だったりするのだ



8/36ページ
スキ