過去と現在が交差する時

横島達とエミの話し合いの結果、後日閉店後の魔鈴の店に集められた小鳩と愛子の二人は予期せぬ話に戸惑いを隠せなかった

一応横島が仲介する形をとって魔鈴の店での対面となったのだが、エミはすでに二人に対して雇用条件や待遇などを書面で用意しておりその本気度が伺える

エミの雇用条件は社内規則として事務所で扱う情報の管理など細かく指定されているなど厳しいものだったが、その分給料も並の事務員よりかなりよかった

それに事務職にも関わらず危険手当までついてるのは驚きである


「GSの難しさは以前ちょっと話したわよね。 私は仕事としてGSをしてるから、命を賭けるほど危険な依頼は受けないワケ。 それでもGS事務所での仕事は一般事務より危険なの。 その分給料は高いわ。 無理に頼むつもりはないけど、卒業後の選択の一つにして欲しいワケ」

戸惑いながらも真剣に聞く小鳩と愛子に対して、エミはGS事務所で働く利点と欠点を語る

利点としてはなんと言っても給料や待遇は抜群にいい

加えて愛子にはエミが保護する形を取ることも可能だとの条件が付けられている

GS事務所の事務員の給料としてはエミの給料はトップクラスだった


次に欠点だが、こちらはやはり普通の事務職に比べれば危険性が高いことである

それでも一流のエミなだけに並みのGS事務所よりは安全に気を配っているので、他のGS事務所と比べると安全なのだ

しかし一般事務と比べると危険なのに変わりない

GSほどではないがGS事務所の事務員もまたハイリスク・ハイリターンだった


「一つ言っておきたいのは、令子は特殊なGSなワケ。 基準を令子に考えるのは止めてほしいのよ」

雇用条件や待遇を見て考え込む二人にエミは令子を基準にしないように頼む

横島を見てもよく感じるのだが、令子を基準にGSを考えられるのはエミにとって不愉快でしかない

エミ自身も令子と対決する以外では、命を賭けたり危険なことをすることは全くなかった



「差し出がましいようですが、卒業前にアルバイトという形で雇ってみるのはいかがですか? お二人も仕事を経験した方が考えやすいでしょうし」

突然のエミの話に決断出来ない小鳩と愛子を見て、魔鈴は仮雇用をしてはどうかと告げる

GSやオカルト業界は外からみるとわかりにくいのが難点なのだ


エミの場合は呪いの類の仕事の事務は二人に任せられないだろうが、通常の除霊ならば任せることも可能だろうと魔鈴は思うのである


「それもいいわね。 一度アルバイトとしてやってみる?」

実際二人の働きぶりを見てみたいエミは魔鈴の提案に乗り、アルバイトでの雇用の条件を提示していく

こちらは一般事務とさほど変わらぬ時給だが、それでも当然並のバイトよりは時給が高い


「はい、よろしくお願いします」

結局悩んだ二人だったが、夏休みの後半を利用したバイトには乗り気だった

小鳩はちょうど夏休み中の短期間バイトを探していたし、横島達との勉強会以外が比較的暇だった愛子ももちろん乗り気である

結果さっそく次の日から、二人のバイトが始まることになった


ちなみに大人しかった横島はと言えば、黙って聞いていただけである

エミも丁寧に説明しているし魔鈴も居る現状で横島が口出し出来る事など全くなかったのだ
6/36ページ
スキ