過去と現在が交差する時

同じ頃、タイガーのマンションには魔理が訪れていた

真夏の暑い日々だがタイガーのマンションはエミが助手用に持っている物件であり、冷暖房完備しており快適なのだ

タイガーと魔理のデートは外で会う事もあるが、タイガーはギリギリの生活であり魔理は学生なので二人はお金がかからないタイガーのマンションで会う事も少なくなかった

ちなみに二人はもちろんプラトニックな関係である


「そういえば魔理サン、卒業後はどうするか決めたんですかいのう?」

部屋でDVDを見ていたタイガーと魔理だったが、ふとした時にタイガーは魔理の卒業後の話を尋ねた

実は魔理は今だに卒業後の進路を決めてない

正確には魔理はGS専攻クラスなのでGSになるはずなのだが、卒業パーティーの問題以来悩み迷っていたのだ

魔理達GS専攻クラスの生徒達は、もうほとんどの生徒が卒業後の就職先であるGS事務所を決めている

まあ大半は親や知り合いのGS事務所に就職や修行に行く事が入学当時から決まってるのだが


いかにエリート中のエリートである六道女学院霊能科のGS専攻クラスとはいえ、実際にGS免許を取得出来るのは僅かしか居ない

この後彼女達は何年かかけて修行しながらGS試験を受けるのだが、魔理は今だに就職先の事務所を決めてないのだった

しかも魔理の場合はお世辞にも霊能の成績がいいと言えないため、就職先を探すのも大変なのである


「それがまだ決まらないんだよなぁ。 でもアタシの成績じゃ雇ってくれる人探すの大変だし……」

先程までは普通だった魔理も、卒業後の話になると表情は曇ってしまう

タイガーと和解後に一度はGSを目指そうと決めたものの、具体的にどんなGSになりどこの事務所に就職したいかと聞かれると困るのだ

まあ魔理には調査や霊視などの間接的な能力も才能もないため前線で戦うしか道はないのだが、実際にはどこの派閥のどの事務所に就職を目指すかは難しい問題だった

一番厳しい寺社系のGS事務所だと僧侶と同じく数年単位で無給のまま修行に励まなければならないなど、価値観から技術や待遇などがまるで違う

元々一般人とは隔離された世界なため、一般社会との様々な格差が多いのである


「タイガーのとこの事務所はどうなんだ?」

「エミさんは難しいと思いますケン。 人手不足でも、よほど信用出来る人でないと使う気がないみたいですからノー」

どうせならばタイガーと同じ事務所で修行したいと漠然とした希望はある魔理だが、タイガーはそれは無理だと感じていた

エミは何より信用を大切にしており、忙しい現在でも事務員すら雇ってないのだから

それに卒業パーティーの一件を知るエミが、魔理を雇うはずがないと知っている


「すぐに雇ってくれるのはオカルトGメンくらいじゃないですかいノー」

「オカルトGメンは流石にちょっとな~ あの話を聞いた後だと行きたくないね」

オカルト業界で一番人手不足なのはオカルトGメンなのだが、アシュタロス戦の真相を聞いた今となっては魔理は行きたくない

部下を捨て石にして平然と嘘をつく美智恵のような人の元では、流石に働きたくなかった

結局魔理の進路は未定のまま話が終わってしまう
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