サマーバケーション~2~

「それにせっかくみんなと知り合ったんだから、年に2~3回くらいは難しい事考えないで楽しめる機会があってもいいと思うんだ お前だってデジャヴーランドに来れたからラッキーだったろ?」

横島の答えは天竜が聞きたかった事からはズレた答えだった

しかし天竜は横島が自分の力や存在感をどうでもいいと考えてる事に気付く

自分や世界よりも周りの大切な人の事を第一に考える横島に、天竜はそれもいいのかもしれないと感じる

神族でも上層部に近い天竜にとって横島の考えは理解出来ぬ部分も多いが、横島は横島なりに考えてる事を聞けたからそれでよかったのだろう

それに横島の作り出したこの旅行が、天竜にとって新しい発見と楽しい時間だった事に変わりはない



その後は天竜も横島もその話題に触れる事はなかった

そして楽しい時間はあっという間に過ぎて、夜になり魔鈴の店で解散になる


「次は冬くらいに、何かしようって考えてるからよろしくな」

帰り際に横島は次回の話を持ち出すが、その事に驚く者は居なかった

ワルキューレや銀一などの忙しい者からは、日程の決定を早くしてほしいとの要望が出たくらいである

そのまま神魔組やエミ達が帰っていくのをそれぞれに見送った横島達は、寂しさとホッとした気持ちの入り混じった感じだった


(私はやはり大変な人を選んだのかもしれませんね)

全員を見送った魔鈴は横島の横顔をチラリと見て、改めて横島の凄さを感じている

この旅行は特に何の変化もない普通の旅行だったが、最初と終わりで変わった部分もあった

それは個人と個人の距離だろう

元々横島は相手が誰であれ気にしないが、そんな価値観が僅かに他の人にも広がった気がするのだ

魔鈴自身も神魔に対しての距離は明らかに縮まったし、次の機会がある事を楽しみに感じている

冷静に見れば有り得ないようなメンバーの関係が、当たり前に感じて普通に楽しめてる自分に魔鈴は僅かに戸惑いを感じていた


(とりあえずは早い時期に、次回の日程の調整が必要ですね)

横島の価値や凄さを改めて感じる魔鈴だったが、それに続いて考えたのは次回の日程調整が早々に必要になった事だろう

おそらく次回も同じメンバーが集まるとすれば、日程の調整は楽ではない

横島の理想や価値を理解する魔鈴だったが、それと同時に横島にはそんな細かな調整が出来ない事も理解している

結局やるべき事が増えた魔鈴だったが、そんな自分の立場も気に入ってもいた

横島の理想や未来を共に目指したいと考える魔鈴にとって、横島が細かな点を任せてくれるのは嬉しいでもあるのだ



(何事もなく終わって、本当によかったわ)

一方全てが無事に終わって安堵しているのはタマモである

横島や魔鈴はそれほど不安を感じてなかったようだが、タマモだけは僅かに不安を感じていた

現状で小竜姫やワルキューレ達が争うとは思えないが、第三者に狙われるなどして何か問題が起きる可能性は決して否定出来なかったのだ

まあ斉天大聖やワルキューレなども居るためタマモが心配しなくても誰かが警戒し手を打っているとは思ったが、それでも警戒するに越した事はない

横島の生き方には味方も多いが敵も多い事をタマモはよく理解していたのだ


「さあ、ゆっくり休んで明日からまた頑張るか!」

どこか満足げな横島が店に入る姿に、タマモはホッと一息ついて自分も続いていく

全てが無事に終わった今夜はタマモもまたゆっくり寝れるだろうと思っていた


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