サマーバケーション~2~

夏の香りが辺りを包み込む中のプライベートビーチでの花火見物は、優雅としか言いようがないものである

その後もホテルの最上階で夜景を見ながらバーで軽く飲むのだが、天竜とタマモはともかくシロとパピリオには大人過ぎる世界だった

しかもこの二日目は初日と違い安くない金額がかかっているが、それは横島も魔鈴も納得の上での事なのだ

数多くの思い出を作りたい横島と、年齢や種族が様々なメンバーがみんな楽しめるようにと苦心した魔鈴の考えが一致した結果なのだから

そしてパピリオやベスパやタマモ達や愛子などに、数多くの体験をさせてあげたい横島と魔鈴の二人の想いの詰まった一日だった

決して贅沢=思い出や幸せではないが、時にはこんな体験も必要だろうと二人は考えている

この中の何人が横島と魔鈴の想いや考えに気付いているかは分からないが、総じて感じたのは横島と魔鈴の相性の良さだろう

何かとオチというか失敗の多い横島の行動が上手くいってる現状には、魔鈴の影ながらの努力があった事にはみんな気付いている



そんな旅行もいよいよ最終日になるが、最終日は天竜の夢だったデジャヴーランドだ

パピリオの希望と天竜が以前にこだわっていたことが理由なのだが、このデジャヴーランドは意外にも神魔の大人組にも好評だった

小竜姫・ヒャクメ・ワルキューレ・ジークまでも興味津々な様子でアトラクションを回っているのだから……

一種のカルチャーショックだったのかもしれないが、神魔の価値観ではこのデジャヴーランドは本当に珍しいのかもしれない


「おぬし、何を考えているのだ?」

それは横島と天竜が二人でトイレに向かった時だった

この旅行中ずっと疑問を感じていた天竜はそれを横島に直接聞こうとしている


「ん? トイレに行く事を考えてるんだけど」

「そうではない。 何故その才能を生かさんのだ?」

この場所に魔鈴や小竜姫が居れば天竜を止めていただろうが、天竜もまた第三者が居ない時を狙って横島の本心が聞きたかったのだ

一見以前と変わらぬように見える横島だが、その内面が全く違う事に天竜も気付いている


「才能か…… 俺って才能あるのかな?」

天竜の言葉に横島は自分の才能を考えるが、本気で才能があるのか分からない

確かに文珠が貴重なのは理解しているが、横島自身才能があるなど思った事がない

しかしそんな横島に天竜は、驚きながらも現状の難しさを始めて感じていた


「俺にはやらなきゃいけない事がたくさんあるんだ。 難しい事は解らんし、出来るかも解らんけどな。 正直、俺は自分の事で精一杯なんだわ。 俺のために命を賭けてくれたやつを助けなきゃダメだし、俺を信じてくれるみんなが幸せになるように手助けしたいしな」

天竜の真剣な面持ちに横島は心の中にある思いをぽつりぽつりと語っていく

何をしたらいいのかも解らないし、何が出来るのかも解らない

しかし自分が守りたい存在だけは必ず守る

横島にあるのはそんな強い想いだけだった


「横島……」

「俺は見たくないんだよ。 友達って言うか仲間って言うか、今日来てくれたみんなが苦しんだり傷付く姿をな。 だから俺は俺の好きにしてるだけだよ。 みんなが少しでも相手を知り仲良くなれば、悪い方にはいかないと思うんだ。 まあ俺のワガママなんだろうけど……」

横島の考えは難しいモノではなく、とてもシンプルなモノだった



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