サマーバケーション~2~

その後もそのまま泳いだり砂浜でくつろいだりと、それぞれに自由な時間をゆったりと過ごしていく

途中で銀一の事に気付く人も何人か現れるが、場所柄それほど騒がれる事もなく平穏なままである

昼食は水着のままで入れるホテルのレストランで食べて、本当に自由気ままな時間が過ぎていった


「せっかくなんで、みんなで写真撮りましょうか?」

半日ほどで横島はかなりの写真を撮っていたが全員が一緒に写った写真がない事に気付き、近くに居たホテルの従業員に頼んで写真を撮る事になる

それは横島の単なる思い付きであり、せっかくの旅行だからみんなで写真が撮りたいと考えただけなのだが……

横島と魔鈴を真ん中に二人を取り囲むように小竜姫やワルキューレ達が並び、パピリオ・天龍・タマモ・シロが前列に並ぶその写真は、横島と仲間達の関係を象徴する一枚となり魔鈴宅だけでなくそれぞれが個人的に神界や魔界にまで持ち込む一枚となる



そして……この一枚の写真が、後の世で様々な憶測を呼ぶ一枚になる事を誰も気付かないままだった

後世の歴史書にはこの写真が必ずと言っていいほど使われる有名な一枚になる事など、誰一人として予測出来ない事である

まあ仮に予測出来てたとすれば、少なくとも小竜姫は抵抗しただろう

せめて普通の服装でと……


写真が有名になった時の生きてるメンバーの反応は気になるが、それはまだまだ先のことである



さて話は戻って一行は夕方より少し早く切り上げて、早めの夕食にしていた

今日は近くで花火大会があり、ホテルのプライベートビーチからゆっくり見る事が出来るのだ

慣れない高級ホテルにピート達や愛子達は相変わらず緊張気味だったが、それもまた一つの経験としていい思い出になるだろう



「ジャーン! 似合うでちゅか?」

食後花火を見に行くために浴衣に着替えるのだが、花柄の子供向けの可愛い浴衣に着替えたパピリオはクルリと回って横島に見せていた


「おー、よく似合うぞ」

浴衣姿のパピリオは予想以上に似合っており、その姿に横島は一瞬ルシオラの面影が重なって見えてしまう

容姿も性格もまるで違うはずなのに、浴衣姿のルシオラが恥ずかしそうに微笑む姿が見えた気がする


(こいつは大人になったらどんな大人になるんだろうな~)

横島がパピリオと出会ってまだ二年も過ぎてないが、その成長は見てわかるほどなのだ

出会った当初心の奥底にあった寿命への悲しみが消えたパピリオは本来の明るい性格に戻っているが、それでも人間の子供よりは遥かに精神的に大人な部分がある事にも気付いている


(贅沢は言わない。 せめて三人揃った笑顔が見たい)

ルシオラに関しては横島自身様々な葛藤や想いがあるが、パピリオやベスパを見るたびに横島は三人を早く合わせてやりたいと思ってしまう

横島としては寿命の違いでパピリオの姿をどこまで見てられるかわからないが、せめて三人笑顔になる姿だけは必ず実現しなければと心で固く誓うのだった


そのまま浴衣に着替えた一同はビーチで酒を飲みながら花火見物をするが、横島は一生に一度の贅沢になるんじゃないかと思うほど別世界な感じの花火見物だった


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