サマーバケーション~2~

「私、海に入って大丈夫かしら? プールすら未経験なのよね……」

パピリオ達が騒ぐ近くでは文珠で本体の机を小さくしてる愛子が、初体験の海に入っていいのか分からずに波打際で悩んでいた

入ってみたいのだろうが、元が机なだけに不安なのだろう


「大丈夫なのねー! 愛子ちゃんは妖怪だから、別に水や海水に使っても問題ないのね!」

海水が微妙に怖い愛子を、ヒャクメは大丈夫だからと言って軽く引っ張っていく

妖怪な段階で普通の机ではないので問題ないらしいが、愛子は軽い調子のヒャクメに若干不安そうだ


「大丈夫だって、ヒャクメは突発的な事には弱いけど一応神族なんだしな」

「うわ~、一応は酷いのねー これでも神族調査官としては優秀なのよ!」

若干戸惑う愛子に横島は笑いながら大丈夫だと言うが、ヒャクメは一応と付けられたのが気になったらしく自分は優秀だと胸を張る

しかし口調といい態度といい軽いヒャクメが本当に優秀だとは、横島や愛子には思えなかった


「優秀なのは本当じゃよ。 仕事をサボるのもよくあるがの。 わしやヒャクメのような元々妖怪だった者は、生まれながらの神族とは価値観が違うんじゃよ」

「あんまり真面目に仕事して出世しても困るのねー 殿下や老師様みたいに気軽に人界に来れなくなるのは嫌なのね」

いつの間にか老師が近くまで来ておりヒャクメの神界での仕事ぶりを語るが、優秀な割にはサボるのも多いからあまり出世出来ないと老師は語っていく

しかしヒャクメは出世するつもりがないらしく、ほどほどに仕事をしていると自信を持って語っている


「確かにあんまり堅苦しい出世は嫌だよなー まあ俺には一生縁がないだろうが」

ヒャクメと老師の会話に納得がいったらしく、うんうんと頷き笑う横島

そんな神族らしくない会話に愛子は微妙に苦笑いだった

ヒャクメとは楽しい友達になれそうなのは嬉しいが、神族がこんなでいいのか疑問も僅かに感じてしまう



「おっきいお城を作りましょうね~」

一方、天龍・パピリオ・シロは冥子と共に砂の城を作ろうとしていた

いつの間にかマリアも加わっており、大きな城を作りたいと周囲から砂を大量に集め出している


「あんまり大きいのはダメよ。 周りに迷惑がかからないほどにしなさい」

中に入れるくらい大きな城を作りたいと言い出す冥子達に、タマモはたまらずストップをかける

マリアが居ることから、本当に人が入れる大きさの砂の城が出来る可能性があるのだ

しかしそんな物を作ったら邪魔だし、周りが穴だらけになるのは明らかだった


「ええ~、ダメなの~?」

「大きい方がよいではないか!」

「他の人が居るからダメなのよ。 誰も居ないなら別だけど……」

タマモの言葉に冥子は残念そうに見つめて天龍は少し不服そうだが、許可など出来るはずがない


「じゃあ今度は、家の別荘で一緒に作りましょう~」

「別荘持ってるでちゅか?」

「いっぱいあるわよ~ いつでも招待するわ~」

タマモが天龍の不満げな表情に冷や汗を流す中、冥子はすんなりと諦めてパピリオと天龍を別荘に誘っている

その結果パピリオと天龍の興味は冥子の別荘に移り、三人は別荘の話などで盛り上がっていく

意外な組み合わせの三人だが何故か話は盛り上がっていた


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