サマーバケーション~2~

「人間は変わっておるのう」

横島の功績を少なからず理解している天龍童子からすれば、横島がそれなりの地位に着いてない事は不思議な事であった

神界にも権力争いなどはあるが、横島ほどの功績があれば放っておかれる事などありえない

何故横島が料理人になるのか天龍童子の価値観では理解出来なかった

ここでの問題は天龍童子は横島の功績は知っているが、それを隠されてる事実などを知らない事だ

天龍童子が知るのは横島が中心となりアシュタロスを倒した事くらいである

まあルシオラの存在や令子も活躍した事なども知ってはいるが、戦後の人間界の事情などは全く知らなかったのだ



「あの横島が料理を作るようになるなんてね…… 世の中わからないものだわ」

一方別のテーブルでは魔鈴のサポートをするように料理をする横島の姿を、エミは驚きながら見ていた

出会った頃の横島を思えば、まさか料理をするような男になるとは思いもしなかったのである


「イメージとしてはなかったですよね。 霊能の方も今でも日々レベルアップしてますよ」

「ワッシは横島サンに全く勝てんですからノー」

エミの驚きに同感だと感じるピートとタイガーは、ここ数ヶ月での横島の急激な変化に驚愕すら感じていた

実際横島がGSを辞めるなど以前なら考えられなかった事だが、現在はレストランの一員としてしっかり働きその立場を確実なものにしている

案外GSよりも向いてるのではと考えているのは、愛子やピート達の共通意見であった


「元々才能はあったのだろうね。 ただそれがまっすぐ伸びる環境がなかっただけかもしれない」

苦笑いと言うか若干の苦悩の表情を浮かべた唐巣は、過去の横島を思いだし素質や才能は元からあったのだろう言う

それは唐巣もかなり以前から気付いていた事だが、現状の魔鈴の元での横島の成長を思えば以前の令子の元での横島がいかに歪んだ成長をしていたのか実感している

まあそれが全て令子の責任だとは唐巣は思わないし、かつての横島の問題点も十分理解していたから仕方ないとも思うが……

それでも魔鈴の元での横島を見ると、令子と魔鈴の差を感じずには居られなかった

結局、自分と令子は師匠には向かないとシミジミ感じる唐巣であった



「横島さん、右端の肉はもういいですよ。 それと隣は裏返してください」

さて噂をされてる横島だが、魔鈴の指示の元でバーベキューの肉を焼いている

鳥・豚・牛の三種類の肉の複数の部位を焼く横島に、魔鈴は的確な指示を出す

魔鈴本人は野菜や魚貝類を焼いており、その動きに無駄はない


「おっさん、食っていいぞ。 タレはそこに5種類用意してるから好きにな」

焼けた肉を皿に盛った横島は一番食べたそうな表情をしているカオスに渡し、野菜もちゃんと食えと言わんばかりにサラダも渡す


「すまんのう、肉など久しぶりじゃわい」

どんぶりに山盛りの温かいご飯に、タレを付けた肉を乗せたカオスはかきこむように食べ始める

貧乏なカオスの気持ちを理解する横島はかつての自分を思い出し複雑な気分になるが、それにしてもカオスの食べっぷりは気持ちがいいほどだった

自分が手伝った料理を美味しそうに食べるカオスの姿に、横島はGSでは決して味わった事がない充実感を感じていた


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