サマーバケーション~2~

「人間界の魚は大人しいな」

「魔界は生態系がまるで違いますからね」

それぞれが水族館を楽しむ中、ワルキューレとジークもそれなりに楽しんでるようだった

二人には人間界の物は珍しいのかもしれない

そのまま一行はアシカショーなどを見て水族館を後にする事になる

パピリオや天龍童子はアシカショーに喜びアシカをペットにしたいと言い出すなどあったが、総じて楽しそうだった



その後一行は再びバスで移動して、今夜泊まる予定の場所に向かっていく

賑やかなバスが進んで行く中、ベスパは流れゆく景色が懐かしい場所に近付いている事をヒシヒシと感じていた


(ここは確か……)

あの日の出来事が昨日のように蘇っていくのを、ベスパは複雑な表情で受け止める


(私は知っていた。 姉さんが横島に惹かれるのを……)

初めてまともに関わった人間である横島に興味を持ったのはパピリオだけではなく、ベスパやルシオラも人間そのものに興味を持って見ていた

ベスパ達も知識としては人間を知っていたが、出会った人間が横島だった事は運命を感じずにはいられない

知識で知る人間と同じで弱く愚かだとベスパは感じたが、同時に知識にはない強さや輝きがあった事も気付いていた


(私は横島に惹かれる前に心を閉ざしたけど、姉さんは心を開いてしまった。 でもそれは仕方ないこと…… アシュ様は私達に心を与えてしまったのだから)

アシュタロスが何を考え三姉妹に心を与えたのかはベスパもわからない

しかしアシュタロスが心のどこかで、ルシオラの反乱を喜んでいた事は確かだとベスパは思う


(皮肉なもんだね。 アシュ様を倒した横島が、私よりアシュ様を理解してたなんて……)

似ても似つかない横島とアシュタロスがどこかで互いを理解していたのではと考えると、ベスパは不思議な気持ちになる


(きっとアシュ様は自分を眠らせる為の相手に横島を選んだんだ。 神族でも魔族でもない人間のアイツを……)

確証がある訳ではないが、ベスパはアシュタロスが自らを永遠の眠らにつかせる相手を自分で選んだんだろうと思う

前世ではメフィストを今生ではルシオラを裏切らせた横島を、自ら滅ぶための相手に選ぶアシュタロスの気持ちをベスパは理解出来ないが、おそらくアシュタロスはこの結末を知っていた気がしてならない


「到着したぞ」

ベスパが少し考え込んでいた間に到着したのは、かつてのアジトだった


「ここに来る気がしたよ。 きっとアンタは私達をここに連れて来ると思った」

あの日と変わらぬかつてのアジトの姿を、ベスパは冷静に受け止めている

途中からここに来る事をどこかで気付いていたらしい


「ベスパちゃん……」

「パピリオ、私達が未来に進むには一度はここに来る必要があるのよ。 私達三姉妹はここから未来に進まなくちゃダメなんだと思う」

ベスパと違い動揺が隠せないパピリオだが、そんなパピリオに優しく語り聞かせていたのはベスパだった

一方横島は二人に説明やら話す事をずっと考えていたのだが、自分が何か言う前に理解していたベスパに驚きでいっぱいである


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