次の定休日、旅行の準備が一段落した横島達四人は魔法のほうきで人狼の里を目指していた

前回魔鈴が来た時に大まかな里の位置を覚えたらしく、今回は時間短縮の為に魔法のほうきで来ている

横島がシロを乗せて魔鈴がタマモを乗せているが、やはり移動スピードはかなり速かった

本当は文珠の転移が一番早いのだが、横島は人狼の里に行った事がないし魔鈴やタマモ達は文珠の転移自体経験がない

元から横島は感覚的に簡単に転移が出来ているが、文珠の二文字使用のための霊力コントロールや転移の際の空間把握能力は第三者ではなかなか難しく、練習する危険さからまだ第三者が試した事はなかったのだ

結局今回は魔法のほうきで来たのだが、山奥という事もあり歩きや電車よりはかなり速かったようである



「おお！　久しぶりじゃのう。　横島殿はずいぶんと強くなられたようじゃな」

里に到着した横島達を人狼達は温かく迎えるが、中でも長老は横島の成長に驚きを隠せないようだった


「この前はいろいろ俺のワガママでシロを振り回して、すんませんでした」

驚く長老に横島は前回のゴタゴタの謝罪から入る

元々長老が令子を信頼してシロを送り出したと考えている横島は、前回シロを令子の事務所から連れ出す際にかなり自分のワガママを通したと考えていたのだ


「構わぬよ。　こちらこそシロの事は感謝しておる」

久しぶりに里に戻ったシロだが、その表情は元気そのものである

長老は東京での暮らしが上手くいっている事に安堵していた


「少し庭をお借りしますね」

一方魔鈴は到着早々に庭に魔法陣を描き始める

人狼達が物珍しい魔法陣に注目する中で魔鈴が魔法陣を作動させると、なんとそこには５０箱くらいのダンボールが現れていた


「すごい……」

大規模な召喚魔法に驚く人狼達だが、その目線はむしろダンボールの中身に集中している


「拙者達みんなでお金を出して買ったお土産でござる！　みんなで食べて下され」

笑顔で胸を張るシロは、多くの仲間達にもみくちゃにされながらお土産を喜ばれていた

そう、お土産の中身は全部ドッグフードなのである


魔鈴の店で働いて数ヶ月、シロは貯まった給料で仲間達へ何か買いたいと常々考えていたのだ

今回はそれに横島達もお土産としてお金を出した為に、結構大量のドッグフードになっている


「これはまたすごいのう」

里の村人が全員お腹いっぱい食べれる量という事でシロが考えたお土産の量に、長老も驚きの連続だった

町に出た幼いシロが、これほど分かりやすい形で皆に結果を示したのにも驚きなのである



その後、人狼の里はシロの帰省と横島達を歓迎して宴会になっていた

イワナやヤマメなどの川魚の塩焼きに猪の鍋や丸焼きなどの山の幸を出し惜しみなく並べた結果、人狼の里の中央広場には大量の料理で埋めつくされている


「スゲーな……」

「シロちゃんの食欲は普通だったのですね」

人数に対して明らかに料理の量が多すぎる現状に横島と魔鈴はポカーンとしていた

横島達の前にも軽く５人前以上はあるだろう料理が並んでいくのだから、横島と魔鈴は人狼達の食欲にただ驚くしかない

シロの人並み外れた食欲は理解している二人だが、大人の人狼がシロ以上に食欲があるなど予想出来なかったのだろう