サマーバケーション

「そういえば、お弁当の大量注文は予定してなかったですね」

一人になった厨房で魔鈴は料理をしつつ注文を受けた弁当の事を考えるが、元々弁当の大量注文自体想定してなかったのだ

弁当発売自体が最初は横島達との雑談から始まった事であり、それを主力にするつもりなどなかったのである

暇な時間の有効活用と新規の客を呼び込む手段として、横島が突発的に弁当の販売を言い出したのが始まりだった

持ち帰り用の弁当なら日頃レストランに足を運ばない人にも食べてもらえるだろうと言い出したのだが、最近では割と馬鹿に出来ないほどの利益を上げている


「商才と言うんでしょうかね」

レストランが持ち帰り用の弁当など普通はあまりしないのだが、割と横島の作戦は当たっていた

レストランの客自体も増えているし、弁当経由で訪れる客も確かにいるのだ

何気に横島に商才を感じる魔鈴だった



「ただ今、戻りました……ってタマモはもう休憩っすか?」

出前から戻った横島は姿が見えないタマモが早めの休憩に入ったのかと思うが、魔鈴が弁当の大量注文の為の買い出しだと言うと驚いてしまう


「うわっ、うち弁当屋じゃないんっすけどねー」

「そうなんですが、せっかく注文を頂いたのですから受けましたよ。 横島さんも出前が終わり次第、仕込みをお願いします」

驚く横島にいったい何処まで考えて弁当販売を言い出したのか、気になった魔鈴だがそれよりもまずは仕事が先だった

横島は再び慌ただしく出前に出発をして、魔鈴は一人厨房で忙しく働いていく



一方買い出しに出たタマモは、商店街の店を周り足りない食材を買い込んでいた


「こんなに買い込むの珍しいな」

雪之丞はレストランの方には関わってないが、営業中に大量の買い出しに出る事自体珍しいのは知っている

仕入れに関しては多くても少なくてもダメであり、魔鈴がかなり考えて行っているのを知っているのだ


「急に50人前の弁当の注文が入ったのよ。 流石にそんな材料ないし」

「そりゃ大変そうだな~」

大変かどうかイマイチわからない感じの雪之丞だが、彼は基本的にレストラン業には向いてないのだから仕方ないだろう


「そう? 除霊よりはよっぽど楽よ。 想定外の事でも命の危険なんてないしね」

雪之丞はレストラン業を理解出来ないようだが、タマモは除霊よりよっぽど楽だ考えている

命の危機もないし別に出来ない事をする訳でもないため、精神的に楽なのだろう



その後、ランチタイムが終わった店では昼休憩を挟み弁当の仕込みに入る

中身について具体的な注文はなかったが、夕食時なだけにいなり寿司とサンドイッチだとマズイと考えた魔鈴は急遽夕食用の弁当の作成に入っていた

店の営業もしながらな為に忙しいのは変わらないが、横島を加えた三人で弁当に詰めるおかずから作っていく



「魔法料理魔鈴です。 ご注文の弁当50個お持ちしました」

夕方になり完成した弁当は、指定時間の15分前に横島によって届けられた

この際に弁当の運搬方法が問題になり、流石に50個だと魔法のほうきでは危険なのでタクシーで運ぶなどあったが、後は順調に配達を終える


「いや~、突然で済まなかったね。 いつも頼んでいた店が食中毒で突然営業停止してしまってね」

弁当の受け取りに現れた教師は横島に申し訳なさそうに謝り、突然の注文の事情を話していく



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