次の日の昼時、魔法料理魔鈴は相変わらず混雑していた

最近はランチタイムが一番混雑しており、日によっては以前使っていたほうきの使い魔が活躍する時もあるくらいである

夏の新作メニューは予想通りの好評で、ランチタイムのメニューにも冷製パスタなどを加えると飛ぶように売れていた

加えて以前始めた持ち帰り用の弁当には近所の主婦やサラリーマンなどの弁当だけの固定客がおり、こちらも売れ行きは順調である

昼時の一番忙しい時間は横島が出前でフロアに出れないため、シロと黒ネコだけでは人手が足りなくなるくらいだから店はかなりの繁盛だろう

そして忙しいのは厨房も変わりなく、魔鈴とタマモはフル回転で料理を作ってもまだ足りないくらいである

最早横島達三人は魔鈴の店に欠かせない戦力になっていた


（まさか、人手が足りなく感じるようになるとは思いませんでしたね）

料理を造りながらふと数ヶ月前を思い出す魔鈴は、これほど忙しくなるなど予想も出来なかったと不思議な気持ちになる

横島達を店に誘ったのは魔鈴の個人的な気持ちからであり、店の戦力として期待したからではない多少の赤字ならば除霊をすれば補填出来るだろうとは考えていたが、まさか三人が店の戦力としてこれほど早く活躍するとは魔鈴も思いもしなかった



「パスタ茹で上がったわ！」

「次、お願いね」

厨房では魔鈴が中心に調理しているが、タマモの予想以上の有能ぶりは並の見習いを遥かに越えている

魔鈴の調理スピードや注文が多い料理を計算しながら動くタマモは、並の見習いの二～三人分の戦力になっていた

魔法が使えないので現在は調理補助だが、料理用の魔法を教えればすぐにコックになれるだけの働きをしているのだ

魔鈴が具体的な指示を出さなくても自分で考えて動くタマモが居るだけに、ランチタイムの混雑も捌けている

流石にランチタイム以外はさほど混まないので余裕があるが、ランチタイムとディナーの時間は横島達が居ないと困るほどだった

当初魔鈴は横島達三人には週に二日休みを与えていたが、現在はランチタイムとディナーの時間は働いて貰っている

正直横島達の一人でも居ないとキツイのだ


「ただ今、戻りました」

「次は三丁目と六丁目よ。　もう一件貯まってるから早くね」

「オッケー、さっそく行って来るわ」

ウエイターのピシッとした服も板についた横島は、タマモに出前先を教えられて再び魔法のほうきで出前に向かう

厨房はあくまでも魔鈴の調理スピードを落とさないことを主体に動いていた


「魔鈴殿、夕方の五時に弁当が５０個の注文が入ったでござるが受けていいでござるか？」

「５０個ですか！？　受けて構いません！　タマモちゃん、食材の確認してちょうだい」

もうすぐ一時になりようやく混雑のピークが過ぎようとしていた頃、店に弁当の大量注文が入る

依頼主は近くの学校であり、夕方からＰＴＡの会議がありそれに出される弁当らしい


「あれこれ足りない食材があるわ。　今日はもう弁当作る予定なかったから」

「雪之丞さんにお願いして、二人で買出しをお願いします」

食材はある程度余裕を持って用意してるが、さすがに５０個分の弁当の食材などあるはずがない

タマモは急遽必要な食材をメモして、魔鈴の自宅で勉強中の雪之丞に荷物持ちを頼み二人は買い出しに向かう