サマーバケーション

横島の現在の貯金は20万円ほどである

高校時代に魔鈴と働いて得た給料はかなり貯金していたが、これは百合子の策略の借金の返済に消えていた

高校時代の過度の貧乏な生活に加え偽の借金、そして《お金持ち=令子》のイメージが出来上がってる横島は、基本的にあまりお金を手元に持ちたがらない傾向が強い

魔鈴としては横島の金銭感覚まで口出ししたくないのだが、精神的トラウマが微妙に関わる為に対応に苦慮している

現在は魔鈴がしっかりしてるから問題ないが、下手な女に騙されたら貢いでしまいそうなほどお金に執着しない横島に困ってもいた


「令子のせいでしょ? あの守銭奴がやりすぎたのよ」

横島の金銭感覚を悪化させた一因は間違いなく令子にあるし、それはエミが言う通りである

横島自身あまり口にしないが、令子とおキヌが横島に隠しておキヌの給料を高くしていた事も大きい

元々かつての横島としてはおキヌを一番評価していたし、高い給料を貰う事に反対などしなかっただろう

ただ常々自分達は仲間だと言っていたおキヌが、隠した事が横島はショックだったのだ

三人の関係が壊れたきっかけはルシオラの扱いだが、それ以前の令子やおキヌの行動も無関係ではない

仲間だと言っていながら、横島が苦しい生活をする傍らで令子とおキヌは裕福に暮らしていた

そんな潜在的なイメージが横島には強く残っている

そして自分がそんな立場になる事に微妙に抵抗感を感じているのも、金銭に執着しない一因だった


(しかし、悪化させたのはお母義さんなのですよね…… 行動の責任は必要でしょうが、他人の犯罪行為の借金を背負う事は必要ない気がします)

令子の脱税の片棒を担がされた借金を何故横島が返すのか、実は魔鈴は納得してない

いくら恋人とはいえ口出しする問題でないため口を挟まないが、この件の百合子のやり方には納得してなかった


「旅行に関しては横島さんが、皆さんに同じように楽しんで欲しいと考えてますので気にしないで下さい。 時期的にお忙しいかもしれませんが、よかったら少しだけでも来て頂くとありがたいです」

話がズレたと感じた魔鈴は話に戻すが、旅行の件に関してはたくさんの人が集まるのに魔鈴も賛成でなのだ


「横島も一体何を考えてるのかしらね~」

何をどう考えれば神魔と妖怪とGSが旅行に行く事にたどり着くのか、エミは不思議で仕方なかった

横島が深く考えてない気もするが、それでも有り得ない状況を簡単に作り出す横島につい感心してしまう


「どうも横島さんは定期的な集まりにしたいようなんです。 忘年会とか新年会のように……」

「それが可能になるのが横島君の凄いところだね。 本来神族がそのような用件で人界に来るなどないのだから」

横島が卒業パーティーのような集まりを定期的にやりたいと考え実行している事に、唐巣は思わず苦笑いを浮かべていた

本来人間と神族に個人的交流などないのだから

それに魔族や妖怪を加えて実現してしまう事が信じられないのだ


「まあ、せっかくだから顔を出すくらいならいいワケ。 ピートや近畿君も来るんだろうし」

いろいろ深読みしても仕方ないと感じたエミは、結局自分も楽しめるメンバーなので参加する気があるようである

主催が横島なだけに、下手な裏などない事も気楽に参加出来る理由ではあるが


「小竜姫様が来るなら私が顔を出さない訳にはいかないな」

一方唐巣としては旅行には抵抗があるが、小竜姫達が人界に来るなら最低限挨拶は必要だと考えている

まして天龍童子や斉天大聖が来るならば、不測の事態に備えて行かなければならないと考えているようだった


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