サマーバケーション

「そうですね。 難しい事ではありますが、力を持つ者としては知るべき現状だと思います」

エミの言葉に魔鈴も同意する

周りの影響からか最近は雪之丞も妖怪に寛容になって来てるし、以前より弱者などに対しても同情したりする事が増えていた

それは一見いい変化なのだろうが、以前エミが語った通り中途半端なままでは危険なのだ

唐巣の現状をそのまま勉強させる事は雪之丞にとって、何よりの勉強になるだろうと魔鈴は考えている


「おたくは横島も居るしね。 いろいろ大変よね」

魔鈴の言葉にエミは軽く同情してしまう

雪之丞と横島を抱える魔鈴が大変なのはエミも唐巣も理解している

人界最強の部類に入る二人が、非常識の塊なのだから気苦労が絶えないだろうと思うのだ


「楽ではないですが、うちにはタマモちゃんとシロちゃんが居ますから。 正直、二人にはかなり助けられてます。 それに小竜姫様もかなりいろいろ気にかけて頂いてますし」

苦労も多いが、現在の魔鈴には味方も多かった

タマモとシロはいつの間にか魔鈴をフォローするようになっているし、小竜姫もいろいろ相談に乗ったり横島や雪之丞にアドバイスするなどかなり助けになっているのだ


「小竜姫様か……、ここだけの話だが小竜姫様がGS協会に対して、横島への干渉をしないように動かれた事は知ってるかい?」

「えっ!?」

小竜姫の名前に、唐巣はGS協会上層部から聞いた話を魔鈴に話し始める


「やはり知らないか。 横島君をGSに戻さないように釘を刺したらしい。 上層部では魔鈴君に関しても、事実上小竜姫様の影響下だと判断してるようだよ」

唐巣の話に魔鈴は困惑してしまう

確かに横島と小竜姫の関係はいいが、まさか小竜姫が密かに動いてるとは思わなかった


「相変わらず贅沢な環境なワケ。 日本に小竜姫様に逆らえる霊能者は居ないわ。 それが無ければ、横島がオカルトから離れるのは無理だろうけど……」

どうやらエミはその情報を知っていたらしく驚きはない

しかしエミから見ても羨ましくなるような環境なのは間違いなかった


「どうりで横島さんへの外部からの接触がない訳ですね。 まさか小竜姫様がそこまでして下さったとは……」

この数ヶ月、雪之丞の試験以来魔鈴や雪之丞への依頼の増加や外部からの接触は何件かあったが、横島には全くなかったのだ

それが魔鈴には疑問でもあった

横島の能力を考えると引き抜きや除霊依頼がいくつか来ても、不思議ではないのだから


「この件は横島君には言わない方がいいが、小竜姫様にはお礼を言った方がいいだろうね」

困惑気味の魔鈴に、唐巣は話を横島に隠した上で最低限のお礼は必要だと話す

正直神族との付き合いは横島が考えてるよりずっと難しいものだった

まあ当の小竜姫は横島の影響からか、あまり気にしてないのだが……


「はい、ありがとうございます」

「そう言えばタイガーを通して旅行に誘われたけど、アレも小竜姫様が来るんでしょう?」

小竜姫の話ついでにエミは旅行の件を持ち出す

どうやら横島はエミや唐巣も誘っていたらしい


「はい、神族からは小竜姫様・ヒャクメ様・天龍童子殿下に加えて斉天大聖老師もいらっしゃる予定です」

神族からの参加予定メンバーを聞いたエミと唐巣は、あまりのメンバーに固まってしまう



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