サマーバケーション

「通常病魔は患者が元々病気にかかってる場所にとりつく事が多いが、この彼女は病院にも行けない為に何処が原因かわからない。 静脈の中を移動して探していくよ」

女性の体に入った唐巣達だが、唐巣の説明を受けつつ病魔を探していくことになる


「病魔を除霊するポイントは相手より霊体の大きさを大きくして、みんなで押さえ付けて体外に連れ出すんだ。 難しい事はないが、下手に病魔に暴れられると患者が苦しむからね。 慎重に行こう」

病魔を探していく唐巣達だが、比較的早くみつかり簡単に体外に連れ出して除霊に成功する事が出来た

霊体の大きさの調整は雪之丞とタイガーは出来ないが、これは唐巣が雪之丞とタイガーの霊体を調整してピートを含めて三人で取り押さえると簡単に捕まえる事が出来たようである



「さて、私は少し電話を借りて来るから待ってて欲しい」

除霊も終わり体に戻った唐巣達だが、唐巣にはまだする事があったようだ

携帯など持ってない唐巣はどこかで電話を借りてこようとするが、雪之丞が携帯を貸す事で何処かに電話をかけていた


「おはようございます。 唐巣です。 一人お願いしたい人物が居まして。 はい……」

何処かに電話をした唐巣はこのアパートの住所などを告げると電話を終える


「今、お母さんを病院に連れて行くからね。 お母さんと君の着替えなど用意してくれるかな?」

電話を終えた唐巣は少年に入院の準備を頼んで一息つく


「この少年と母親は保険証を持ってないのだよ。 生活が苦しくて支払いが出来なかったらしい。 この後病院に連れて行き、保険証取得の申請と生活保護の申請などさせるつもりだ」

ピートはある程度理解してるようだが、意味がわからないような雪之丞とタイガーに唐巣はこれからの説明を始める

元々この女性は保険証がないため病院にも行けずに、風邪を拗らせて寝込んでしまったらしい

食べる物もロクにない女性は体調をどんどん悪化させ、病魔にとりつかれたようだ

そんな中で同じアパートの住人に唐巣を知る者が居たため、助けてやって欲しいとの依頼が唐巣に来たのが始まりである

ちなみにこの仕事は全くのボランティアなため、GS協会が関知する依頼ではない

正式には依頼にすらなってないのだ


「病院に入院させる金は大丈夫なのか? 保険証が出るまで現金払いだろ?」

唐巣の説明が終わる頃、雪之丞は複雑そうな表情で問い掛けていた

ここで唐巣が入院費用を肩代わりすれば、また唐巣が倒れるのではと考えたらしい


「弱者支援は私だけでしてる訳ではない。 病院は六道さんの系列病院に行けば費用は待ってもらえるし、手続きや生活支援もしているのだよ」

唐巣が活用しようとしてるのは、六道家が弱者の為に行っている救済制度である


GS業界で弱者救済として有名なのは唐巣だが、別に唐巣だけではない

弓かおりの実家である闘竜寺は檀家の霊障に関しては採算ギリギリで除霊しているし、他にも付き合いが深い人限定で弱者救済しているGSは少ないながら存在する

そして六道家もまた当然弱者の救済の為に活動をしており、六道女学院の課外授業として除霊活動を経費の一部負担で請け負うなど積極的に弱者支援をしていた

まあこれには六道家の一般社会に対しての対外的な宣伝活動としての意味もあるが、GS業界一の大家である六道家が積極的に弱者支援をしている現状に変わりはない

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