サマーバケーション

さて横島達だが、あの後も暇な時間を利用して別荘の掃除や必要な物の買い物などを続けていた

一方最近の雪之丞は魔鈴の仕事がない日は修業を中心にしているが、エミや唐巣の仕事の助手として手伝いに行く事も増えている

横島と違い基本的にのんびりする事があまり好きではない雪之丞なだけに、積極的に経験を積みたいようだった

ちなみに給料の方はエミや唐巣からは貰ってなく、こちらは助っ人兼実地研修という形を取っている

これはタイガーの時と同じく修業の一貫であり、目的はあくまで雪之丞に経験を積ませる事なのだ

魔鈴自身が難易度の高い依頼が滅多にないため、エミとの相互協力の一貫として雪之丞の実地派遣が行われ始めていた

唐巣とは倒れた時から魔鈴や横島がこまめに顔を会わせるにようになり、こちらは魔鈴から雪之丞の派遣をお願いしていた

その後エミも交えた三者の話し合いで、雪之丞・タイガー・ピートの相互勉強をさせる事で合意する

唐巣自身は新たな役員としてGS協会の仕事も増えており、魔鈴の誘いは渡りに船だった

エミとしてはピートが来る事に拒否するはずもなく、結果的に唐巣・エミ・魔鈴の三者で弟子の育成協力が行われ始めている


そんな今回の弟子育成での協力だが、実はオカルト業界では非常に珍しい事だった

オカルト業界は基本的に一門や派閥などの関係が強く、一門や派閥の間での弟子の育成協力はあるが、魔鈴達のようにタイプが全く違うGSが弟子育成で協力する事自体が本当に珍しい

まず第一に師匠たるGSが相手をよく知り信頼出来ないとだめだし、技術も違えば根本的な考え方も違うGSの師事を受けても必ずしもいい結果になるとは限らないのだ

それに協力と言えば聞こえはいいが技術や人材の流出に繋がる危険もあり、仮に友好関係のあるGSでも弟子の育成で協力する者は滅多にいなかった

まあ下手に他者同士が協力して技術の流出危機などがあれば、一門や派閥から圧力がかかる事も想定されるため実行しようとする者がいなかったとも言えるが……

そう言う意味では一匹狼の魔鈴やエミはあまり関係なく、唐巣には六道家以外に圧力をかけれる存在がいないため問題が起きてなかった



そしてこの日、雪之丞とタイガーは助っ人として唐巣の教会を訪れている


「やあ、二人ともよく来てくれたね。 今日は病魔の除霊を予定している。 二人とも経験はあるかい?」

教会を訪れた雪之丞とタイガーを暖かく迎えた唐巣は、さっそく今日の除霊について説明を始める

唐巣の場合は、依頼の中で雪之丞やタイガーのためになりそうな依頼を中心に選び二人を集めていた

今回の依頼である病魔もその一例で、比較的簡単な除霊の部類に入るが一度は経験しておきたい除霊である


「病魔? 聞いた事がないな」

「ワッシはエミさんに教わりましたけど始めてですケン」

病魔を知らない雪之丞と話だけは知っているタイガーに、唐巣は一から説明を始めていく


「病気で苦しむ人間の霊波を好み取り付いてしまう妖怪なのだが……、妖怪というよりは寄生虫に近いかもしれないね。 話が通じる知能はないし説得などは不可能な妖怪だ」

相手を軽く説明したところで、唐巣はピートと雪之丞達を連れて今回の除霊現場に向かうが……

到着したのは雪之丞が住むアパートが綺麗に見えるほど、ボロボロのアパートだった


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