サマーバケーション

それからしばらくした七月の中頃

六道女学院は夏休みに突入していたが、学院は相変わらずたくさんの生徒で賑やかだった

大学受験の為の勉強をする者や部活に汗を流す者なども多いが、霊能科の生徒はGSになる為の修業に汗を流す者も多い

特に三年のGS専攻クラスのおキヌ達は、卒業後のGS試験に向けてほぼ毎日霊能の修業をしていた

オカルト知識を勉強する自習から始まり、基礎訓練や式神ケント紙を使った模擬試験などその内容は多岐にわたる

自習には教師がつかないが、基礎訓練からは教師がついて教えることもあり霊能科の生徒はかなりの数集まっていた

六道女学院は系列の六道大学があるため受験勉強はそれほど盛んではないが、その分霊能科のオカルト関連の修業は普通科と比べられないほど盛んなのである

GS試験の合格者の三割が六道女学院の卒業者だという裏には、そんな英才教育とも言える高度な教育体制が理由の一つであった



「氷室、気合い入るのはええけどオーバーワークはあかんで」

そしてこの日のおキヌは担任である鬼道の指導の元で、式神ケント紙の簡易式神との模擬戦闘を行っていた

臨海学校の除霊実習以来、おキヌはネクロマンサー以外の除霊に積極的に取り組んでいる

特に神通棍や霊体ボーガンなどは誰でも使える半面、使う者の力量に左右されがちなのだ

令子は元よりかおりや魔理にも教えを請い、ネクロマンサー以外の除霊に力を入れている

横島との問題は相変わらず進展ないが、臨海学校で気付かされた己の未熟さと弱さを変えようと霊能と真剣に向き合っていた


「はい、すいません」

鬼道に注意されたおキヌは、かおりと魔理の元に歩み寄り休息をとる


「氷室さん、動きがかなりよくなりましたね。 元々霊気の流れを読むことは得意でしたから成長が早いですね」

休息に入ったおキヌにかおりは笑顔で声をかけていた

臨海学校からまだあまり月日は過ぎてないが、それでもおキヌはかおりから見てわかる程度に成長しているのだ

元々おキヌは運動があまり得意でない為に模擬戦闘は苦手だったのだが、本気で取り組み出すと目に見えるほどに変わっている

苦手な動きを補うように霊感や霊気を読むおキヌの戦い方は、並の生徒よりも上だった


「本当にスゲーな。 よくあれだけ霊気の流れが読めるもんだよ」

同じくおキヌの戦いに感心する魔理だが、彼女は戦い慣れてる分動きは悪くないが霊気を読むなどが苦手である

かおりいわく二人を足して割ると、一流のGSに届くだろうという評価だ


「私なんかまだまだですよ。 美神さん達の足元にも及ばない」

二人の評価にもおキヌは微妙な表情を崩さない

元々おキヌは学校の授業は真剣に受けていたが、ネクロマンサーに甘えていた事は確かだった

己を変える為にネクロマンサー以外の霊能を求めているが、おキヌの理想とは掛け離れた現状である


(それに……、恐らく私は魔鈴さんにも遠く及ばない)

対抗意識を燃やしてる訳ではないが、直接戦闘が専門でない魔鈴ですらおキヌより実力は上だった

臨海学校で見た実力におキヌは軽いショックを受けている

別にネクロマンサーを捨てる訳ではないが令子と一緒にGSとして活動するにしても、横島と向き合うにしても自分はもっと力が必要だとおキヌは痛感していた


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