「ここはもういいから、あっちで反省会してるから行って来るといい。　みんな飲んでるだろうけど、食べ物もたくさんあるからゆっくりするといいよ」

一通りゴミを集めた魔鈴と横島達に、商店街の人の良さそうな男性が話し掛けて来た

掃除や片付けがある程度終わった頃から、商店街の人々は反省会といいながら宴会を始めているのだ

若い魔鈴や横島達を早めに休ませようと男性は気を利かせたようである


「よろしいのですか？」

「ああ、後は俺達がやっとくよ。　ゆっくり休んでくれ」

掃除は一通り終わっているが、たくさんあるテーブルやイスなどはまだ片付いてない

魔鈴は最後まで手伝わなくていいのか少し気にするが、男性はいいから休めと言って魔鈴達の作業を終わらせてる


「おっ、シロちゃんとタマモちゃんも来たな！　さあ食え。　肉もいなり寿司もたくさん用意したぞ」

男性の気遣いに感謝しつつ魔鈴達は反省会に顔を出すが、最初に歓迎されたのはシロとタマモだった

二人が魔鈴の店で働き始めてから約四ヶ月が過ぎているが、すでに二人が妖怪なのは商店街の店主達に伝えられている
　
と言うより二人が引っ越して来た当初、魔鈴が商店街の店を周り説明していたのだ

タマモは黙ってればバレないかもしれないが、シロは尻尾でバレてしまう

要らぬ疑いをかけられる前に説明して理解を求めていたのである



その結果、二人は簡単に受け入れられていた

元々魔鈴がＧＳなのは商店街の人々も知っているし、商店街の人々の霊障の類の相談なども気軽に乗っていたので何も問題が起きなかったのである

それから二人は魔鈴の店で働いたり商店街で買い物などして商店街の人々と関わっていくが、当初の魔鈴の心配をよそに二人は商店街の人々に可愛がられる存在になっていた

オカルトに疎い人々なので流石に当初は多少の警戒や怯えがあったようだが、人懐っこいシロの影響が大きくすぐに二人に対する警戒や怯えは無くなってしまう

特に年配の人々は孫のような年に見える二人が働く姿を見て、自分の孫のように二人に優しくする人もいるくらいである

シロがどこまで意識してるかは解らないが、その行動が魔鈴や横島やタマモの大きな助けになっていた事に本人は全く気付いてない

まあシロは実際見た目よりずっと幼い子供なので当然なのだろうが……


「すごいご馳走でござるな！　本当に食べていいのでござるか！？」

シロとタマモに真っ先に料理を進めた初老の男性にシロは確認するように問い掛けるが、尻尾をブンブンと振っておりお腹が空いた表情で丸わかりである


「子供が遠慮なんてするんじゃねえよ。　さあ食え食え。　タマモちゃんも遠慮するなよ」

待ちきれないと言わんばかりのシロが料理を食べ始めると、男性は嬉しそうな笑顔になった


「ありがとう。　頂きます」

続けてシロほどあからさまではないが、笑みを浮かべたタマモが素直に食べ始めると料理を進めた男性や周りの人々はそれを見ながら楽しそうに酒を飲んでいく

そしてそんな二人の姿に一番嬉しそうなのは、やはり横島と魔鈴であった


「本当にあいつらはスゲーな」

シロのみならずタマモまで人々に溶け込んでる姿に、横島は二人の無限の可能性を改めて強く感じている

それは横島が求めている世界に近い現実だからなのかもしれない

二人の未来がこのまま幸せになればいいと、願ってやまなかった