「行きましょう！　私達の目で真実を見極めに…」

怒りをやる気に変えたのか、かおりは気合いを入れて立ち上がる

その後、二人は時間まで街をぶらつきながら魔鈴の店に向かっていく



一方、魔鈴の店では魔鈴とタマモとシロが慌ただしく料理をしていた


「一応、多めに作らないとダメですね…」

横島が声をかけた人数は大まかには聞いているが、実際何人来るかわからない

魔鈴はスープを煮込みながら、次々に料理を作っていく


「魔鈴さん、こんな感じでいい？」

野菜や魚の下ごしらえを終えたタマモは、確認するように魔鈴に声をかけた


「ええ、タマモちゃんは器用ね～　本当に料理したこと無いとは思えないわ」

タマモの下ごしらえした材料を見て魔鈴は驚く

一つ教えれば十覚えると言うか、かなり要領がいいのだ


「拙者も負けてられないでござる！」

タマモに対抗するように気合いをいれるシロだが

こちらはまだ力加減が苦手なようで、じゃがいもがでこぼこになっていた


「シロちゃんは力を入れすぎよ。　野菜の皮むきに力は要らないのよ」

でこぼこなじゃがいもを見ながら、魔鈴はシロに包丁の使い方を教えて続きを任せる

ちなみにシロのじゃがいもは茹でて裏ごしするので、実は型はあまり気にしなくていいのだ


魔鈴は何かと競いたがるタマモとシロに同じ仕事を任せるが、出来上がりに影響が出ないようにそれとなく野菜の種類を変えている

この辺は平等に扱うが、結果に差がでないような配慮を忘れないのは魔鈴の凄さだろう



魔鈴達が料理をしている頃、横島はカオスを尋ねて幸福荘に向かっていた


「カオスのじいさんも電話くらい引いとけよな～　今時電話も無い生活しとるとは…」

少し前の自分を思い出すと悲しくなる横島だが、気を取り直して魔法のほうきでカオスのアパートに向かっていく


「おーい、カオスのじいさん生きてるかー？」

ドアをドンドン叩き声をかけるが返事が無い


「まさか夜逃げでもしたか…」

「人聞きの悪いこと言うで無い小僧が！」

数回声をかけても返事が無いので、愚痴をこぼして帰ろうとする横島の背後からカオスの声がする


「おっ！　マリア、久しぶりだな～　元気だったか？」

「イエス・横島さん。　マリア元気です」

先にマリアに声をかける横島を見て、少し嬉しそうに答えるマリア

一方カオスは微妙に呆れた視線を横島に向ける


「おぬしも相変わらずじゃの。　して何か用か？　ワシはバイト上がりで疲れてるんじゃが…」

やれやれと言った表情で部屋の中に入るカオスに、横島は少し笑みを浮かべていた


「あんたは変わらないな…　カオス」

ホッとしたような笑顔でつぶやく横島にカオスは探るような視線を向けるが、横島は気にせず用件を告げる


「俺さ、今日高校卒業したんだ。　それで知り合いを夕食に誘ってるんだ。　よかったら来てくれよ」

「ワシまで呼んでいいのか？　金は無いぞ…」

少し驚いたように見るカオスの現実的な言葉に、横島は笑ってしまう

（俺の知り合いはなんでこうも貧乏人ばっかりなんだろうな…）