サマーバケーション

(あれが今神魔界に最も名が知れてる人間だなんて、誰も気付かないでしょうね~)

結局何も解らなかった冥菜だが、少しホッとしていた部分はある

様々な情報や今日の様子から、横島が現状の生活環境に満足している可能性が高いからだ

横島が何かを望めばどうなるかなど、冥菜にも予想出来ない

正直、大人しくしていてくれるに越した事はない人物である


(それはそれとして、彼はいいわね~ 私に普通に挨拶してくれる人なんて珍しいもの)

六道という名を背負って生きて来た冥菜は、何の利害も警戒もなく接する横島に素直に好感を抱いていた

それが彼女にとっていかに珍しいかは、精神的に幼い冥子を見ればわかるだろう

六道の名を知りつつ普通に接する人など、ほとんどいないのだ


(みんなが横島君を気にする訳が、少しわかった気がするわ~)

横島に会ってみた冥菜は、何故周りがあれほどまでに横島を守り警戒するのか少しわかった気がした

人を引き付けるわかりやすい魅力はないが、その分よく知ると抜け出せなくなるような魅力があるのだろう

立場が違えば、自分もきっと同じ事をして横島を守る立場に回る気がしてならなかった



さて魔鈴達の屋台だが、その後も順調に売り上げを伸ばしている

客層は若い人が多いく、その中でも特に六道女学院の生徒が多い

先日の特別講師や臨海学校の件で名前が知れた魔鈴が屋台を出してると知った生徒達は、噂の魔法料理を一回食べてみたいと集まってるようである

まあ店には普段から六道女学院の生徒も客として来る人はいるが、あまり数が多くなかった

レストランとして営業している魔鈴料理魔鈴は、高校生が帰宅ついでに寄るにしては敷居が高いのだ

魔鈴自身としては食事以外の飲み物だけでも全く構わないのだが、世間的な常識やイメージとして飲み物などで済ませる人は少ない

そんな魔鈴が気軽な屋台を出した事により、偶然通り掛かった六道女学院の生徒達が集まったようである


「ゴメンね、手伝わせて。 予想よりも売れ行きが良くて生地が間に合わないのよね」

一方店の厨房ではタマモがピザを焼く傍らでは、雪之丞がピザ生地をこねていた

あらかじめ十分な下準備をしていたにも関わらず、売れ行きがよくて生地が足りなくなりそうなのだ


「別に構わなんさ。 ところで、これでいいのか?」

料理など始めてな雪之丞は戸惑いながら生地をこねていた

仕上げはタマモがするので雪之丞は下準備なのだが、力がある雪之丞なだけに作業が早い


「うん、その調子でお願い」

チラリと雪之丞の方を見たタマモは、大丈夫だと言わんばかりに笑みを浮かべる

ちなみにピザの方の魔法だが、具材の方に魔鈴があらかじめかけていた

本来はピザを焼く前に魔法をかけたいのだが、タマモでは無理なので具材の下準備の段階で魔法を使用している


「こんばんわ。 こっちも忙しそうね~ あっちも行列が出来て大変みたいよ」

忙しく働くタマモ達の元に、屋台での買い物を終えた愛子とピートが来た

やはり外で食べるには混んでて無理だったようである


「あら、いらっしゃい。 本当に作っても作っても足りないわ」

二人が来て賑やかになった厨房で、タマモは軽く愚痴をこぼしながらもピザを焼いていく

そしていつの間にか愛子とピートが手伝い始めて、こちらはこちらで賑やかに料理をしていった


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