サマーバケーション

人混みの中でも一際目立つ二人は、誰が見ても親子に見えるほど似ている

そしてのほほんとした空気をそのままに屋台の食べ物を買っていた


「冥子ちゃん達も来たんだな」

(わざわざ来るなんて、何か目的でもあるんでしょうか?)

忙しく働く傍らで横島と魔鈴が見つけたのは六道親子である

背後に黒服のボディーガードらしき人が二人ほど居るが、あとは普通の人と変わりなく楽しんでる感じだった

横島は特に気にしてないが、魔鈴は冥菜がわざわざ商店街の夏祭りに来た事に少し疑問を感じてしまう


「こんばんわ~」

「魔鈴ちゃん、この前はありがとう~ 横島君は久しぶりね~」

そんな六道親子だが特にプッツンする訳でもなく、かと言って割り込む訳でもなく普通に魔鈴の屋台に並んで来ていた


「どれがいいか迷っちゅうわ~」

「ハーフサイズのセットもありますよ。 こちらは少しずつ種類を食べたい方にオススメです」

いい匂いがする中でキョロキョロと迷う冥子に、魔鈴はパスタのセットを進める

これは三種類のパスタで一人前の量になるようにした物だった

盛り付けなど少し手間がかかるが、実はこれが一番人気である

屋台はたくさんの種類の料理を食べたい人が多いので考えたのだが、予想以上に好評だった


「お久しぶりっす。 冥子ちゃんの家は金持ちなのに、商店街とか来るんっすね」

「普段はあんまり来ないんだけど~、冥子がお祭りとか好きなのよ~」

一方冥菜とは魔鈴が軽く挨拶した後に横島が世間話をしている

警戒する魔鈴の思いとは対称的に、横島は冥菜がイマイチ危険だと感じないために無警戒だった


「そうなんっすか。 人が多いんで式神は気をつけて下さいね」

横島と冥菜が会話したのはこれだけである

二人はパスタのハーフセットとピザを二枚ほど買って屋台を後にしていく


(何をしに来たのでしょうか? まさか本当にただ来ただけな訳は……)

二人が帰った後、魔鈴は裏があるかもしれないと考えるが全く思い付かない

それが不気味ではあるが、横島の全く気にしてない様子を見ると些か神経質になりすぎな気もしていた



(彼は変わってないわね~)

一方六道親子の二人は、ある程度欲しい物を買って自宅に帰っている

混み合う商店街で食べるよりは、自宅に帰って食べた方がいいと考えたようだ


「お母さま~ 美味しいわね~」

ニコニコと屋台で買ってきた物を食べる娘を見つつ、冥菜は少し考え込んでいる

今日彼女が横島達に会いに行ったのは、単なる思い付きだった

最近魔鈴の店に出入りしている冥子が、商店街の夏祭りを知り行こうとしていたのを聞いた冥菜が着いていっただけである

別に目的があった訳ではないし、もし運が良ければ横島の顔くらいは見れるかもしれないと考えていた程度だ

それが結果的には横島と会話出来たのだから、冥菜としては運がよかったとしか言いようがない


(普通の子にしか見えなかったわね~)

横島と会話出来たのはいいが、実際何かわかったかと聞かれれば特に収穫などなかった

いかに六道冥菜とはいえ、一言二言の世間話で相手の考えなどわかるはずもない

まあ冥菜としてもただ横島の顔を見たかっただけなので、別に問題はないのだが


9/35ページ
スキ