それから一週間ほどした日の夕方、いよいよ商店街の夏祭りが行われる時間となる

この日魔鈴達は店を午後の早い時間で閉店させて、浴衣姿で屋台の準備をしていた

普段とは違い浴衣を着て髪を結い上げた魔鈴の姿はいつもと違った色気があり、横島がその姿に思わず見とれてしまうなどあったが準備は順調に進んでいく

結局屋台のメニューはパスタが３種類にピザが２種類になり、パスタは魔鈴が屋台で作る事になったがピザはピザ釜かオーブンが必要な為にタマモが店で作る事になった

ちなみに魔鈴の店にピザ釜などないのでオーブンで焼くのだが、下拵えなどは魔鈴が事前に済ませているのでタマモは生地を伸ばして乗せて焼くだけである

横島とシロは雑用となして、店と屋台の両方を行き来しながら手伝う手筈だった



それから少し時間が過ぎて日が暮れる頃になると、商店街にはどんどん人が集まって来た

この日商店街は車を通行止めにして歩行者天国にしている事から、路上には次々に人が集まって騒いでいる


「屋台のパスタって珍しいね。　ペペロンチーノ三つちょうだい」

そして魔鈴の屋台だが、物珍しさもあってか出足はなかなかのものだった


「お待たせしました。　お箸とフォークのお好きな方をお持ち下さい」

フライパンを器用に使い次々にパスタを作る魔鈴の隣で、横島とシロが客の相手をして売っていた

料理を買った客達は、道路の中央に設置された屋台の共通の椅子とテーブルで食べていく

様々なイベントなどがあり盛り上がる中でも、魔鈴の屋台はかなり好評な方なようだ



「こんばんわ、凄い混んでるわね～　って言うか流石に私は目立ってダメね」

屋台で売り初めて一時間が過ぎた頃、愛子とピートが来たが愛子は例によって机を背負っておりかなり目立っている

一応机の足が邪魔にならないように足を前に向けて背負っているが、それでも周りの人は変な物を見るような視線を向けて来ていた

この商店街は人狼のシロが馴染んでるだけに普段ならば愛子も問題ないのだが、今日は流石に愛子を見知らぬ人が多いだけに仕方ないようである


「おう、来たか。　そうだな……、ゆっくりしたいなら食べ物買ったら店に行けばいいよ。　厨房にタマモが居るからさ」

愛子を祭り見物に来ないかと誘ったのは横島達だった

学校外に出る事はある愛子だが、それでも人混みは争いに巻き込まれる危険性から避けていたのだ

そんな愛子に屋台を出すから来ないかと横島と魔鈴が誘っていた

この時同時にピートも誘って、密かに万が一の為の護衛も頼んでいる

まあＧＳ免許を持つピートが一緒ならば、万が一何かあっても問題にならないだろう配慮があるようだ


「そうね。　じゃ私達はちょっと見て来るわね」

慣れない人混みに少し悩んだ愛子だが、好奇心が勝ったのか他の屋台を見に行くといいピートと共に人混みに消えていく

横島はそんな愛子を見て僅かに笑みを浮かべていた


「どれがいいかしら～　冥子迷っちゃう～」

「冥子～、早く決めないと皆さんに迷惑がかかるのよ～」

愛子達の後も横島達は休む間もなく屋台を続けるが、ふと気付くと何処かで聞いた事がある声が聞こえて来る