サマーバケーション

それから数日後、魔鈴は夏の新メニューや夏祭りの限定メニューを夕食時に用意していた

これまでに数回試作して横島達に味見をして貰っていたが、この日は完成した料理をみんなで夕食に食べて最終判断するつもりである


「どうかしら? 今年は冷たい料理を売り出すつもりなんだけど……」

冷製パスタや冷製スープに加えメインの肉や魚料理も冷製の料理を並べた魔鈴は、ドキドキしながら横島達の反応を待っていた

冷製料理のコースとして考えたのだが、思った以上にバランスが難しく苦労して完成させている


「上手いっすよ」

「美味しいでござる!」

例によって毎回必ず美味しいと言う横島とシロと、無言でバクバク食べる雪之丞は相変わらずだった


「あんた達は何食べても同じ感想ね…… 魔鈴さんが求めてる具体的な感想はないの?」

「うーん、美味いものは美味いとしか言いようがないんだけどなー」

毎回同じ反応をする横島達にタマモはダメ出しをするが、横島は困ったように首を傾げるだけである

横島としては一応味がわかるつもりだが、細かな感想など言った経験がないだけに何をどう言っていいかわからない


「私は横島さんのそんなところも好きなんですけどね」

タマモと横島のやり取りを見て魔鈴はクスクスと笑みをこぼしていた

下手に批評されるよりは美味しそうに食べられる方が作り手としては嬉しい

それに横島の場合は言葉より表情に現れるので、微妙な好みが最近わかって来たのだ


「それじゃ試食の意味ないと思うんだけど…… まあいいわ。 私は味には満足だけど、どっかに温かい料理か別に温かい飲み物でも加えた方がいいと思うわよ。 その方が冷たい料理が引き立つわ」

タマモが感じたのは冷たい料理が連続だと、口の中が冷たくなり過ぎる点だった

あまり口の中が冷たくなるとせっかくの冷たい料理が冷たく感じ過ぎて美味しさが半減する気がしたのである


「やっぱりコースで出すと冷た過ぎますかね…… 温かいハーブティーでも加えましょうか?」

夏らしい料理を冷たくしてコースにしようと考えていた魔鈴だが、冷た過ぎるかもしれないと気付いて改善策いくつかを用意していた


「拙者はもう少し肉のボリュームが欲しいでござるな」

「肉ですか…… 夏なのでアッサリしたメニューですからね。 人によっては少々物足りないかもしれませんね」

タマモに続き感想を考えていたシロが口を開くが、当然のようにもう少し肉が欲しいとの意見である

基本的に夏限定の新メニューなので夏バテ気味な人でも食べやすく、食べたら魔法効果で夏バテが少しだけ解消されるようなメニューなのだが人によってはボリュームが足りないようだった


「俺はこのままでもいいと思うぜ。 しいて言えばパンよりメシが一緒に欲しくなるがな」

最後に雪之丞の意見を聞き、魔鈴の頭の中で夏の新メニューはある程度完成される事になる

夏の冷製コースは温かいハーブティーか温かいスープのどちらかが無料でサービスされ、料理のボリュームも多少改善されパンとライスが選べる形となり完成する事になった


この売れ行きがどうなるかはわからないが、魔鈴にとっては満足のいく出来上がりとなった事は確かである


3/35ページ
スキ