サマーバケーション

波乱に満ちた除霊実習を終えてその日の夕方帰宅にした魔鈴は、タマモに除霊実習中の内容を聞いていた


「なるほど、やはり文珠を使ったのですか」

あれからいろいろ考えていた魔鈴だったが、多分文珠を使ったのだろうと予想出来ていたのだ

あれだけの霊能者を欺く事は簡単ではないし、タマモやシロの現在の実力では不可能だろう事は理解している


「ええ、私達が目立たずにやるには他に方法が無かったのよ」

改めてタマモの話を聞いた魔鈴は、文珠の奥深さを感じていた

使い方次第ではまだまだ文珠の可能性は広がるだろうし、それだけ使用に関しては細心の注意を払わなくてはダメだろう


「六道女学院側も決して油断してた訳ではないのでしょうが、今回は危なかったですね。 私も除霊の際には今までより注意して行いませんと……」

魔鈴にとって今回の除霊依頼は、始めからあまりいい予感がしなかった依頼だった

確かに操る海坊主が居ないと安全な除霊だったのだが、あれだけ悪霊が集まれば不測の事態が起きても不思議ではない

今回の除霊で魔鈴は改めて除霊の難しさや厳しさを痛感していた


「何はともあれ無事でよかったよ。 って言うか他人と除霊するのって難しいんだな」

魔鈴や雪之丞が無事でホッとする横島だが、今回はいろいろ勉強になる事が多かった

横島自身あまり第三者と共同で除霊するなど経験が少ないため、今回の大規模除霊は見ていていろいろ感じるモノがあったのだ


「ええ、共同除霊は難しいですよ。 本当に信頼出来る相手ならいいのですが、よく知らない相手だと報酬や除霊の主導権を争って険悪になったり失敗したりする事も多いですからね」

魔鈴自身も知らない相手との共同除霊は経験がなく、噂話として聞く程度だがあまりいい話は聞かない

一流のGSは信頼出来る相手としか仕事をしないGSが多く、よく知らない相手と除霊するのは三流GSが多かった

三流GSの場合は実力がないため危険な仕事はあまりしないが、それでも人数が必要な除霊もある

一流や仕事が多いGSはよく知らない相手との仕事を断れるが、三流クラスになると断ると二度と仕事が来ない場合も多い

従って危険は少ないが人数が必要な大規模除霊などは三流の寄せ集めになる事が多く、知らないGSの寄せ集めで連携がとれない結果失敗する事が多い一例となっている


「へ~、やっぱり難しいんすね」

「オカルトGメンやGS協会が主導すればまた別ですが、基本的に一流になればあまり他者との共同除霊は好まないのが実情のようです」

魔鈴は噂話程度だと前置きした上でGS業界の実情を語るが、やはり上に行けば行くほど仕事を選べるようだ

実力もあり仕事を選べるGSが、好き好んで他者との共同除霊をしないのは当然だろう


「一流GSはある程度実力が近い同業者と交流があるようですし、どうしても人手が必要な時はよく知る者と仕事をするようです。 今回のように一流が大勢集まるのは六道家関連以外ではない事でしょうね」

今回の除霊実習でもそうだが、一流のGSをたくさん集めても必ずしも成果が上がる訳ではない

連携がとれない除霊ほど危ないものはないし、あの場所に居た一流GSの数を考えれば横島達が手を出す前に海坊主をなんとか出来ても不思議ではない

しかし結果的に質と数の割に苦戦したのは、連携が取れなかった事が一番の原因だろう

結局この日は、除霊実習の話などをして魔鈴宅の夜は更けていく


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