初夏の訪れは女子高生と共に……

それから横島達は二時間ほど除霊を見物して、周りの地元の人と同じ頃に帰っていく

一応先程追い払った海坊主が戻って来る可能性もゼロではなかったので、それの警戒も含めて見物していたのだが取り越し苦労だったようだ



そして時間は過ぎて東の海上がうっすら明るくなる頃、ようやく六道女学院の除霊実習が終わっていた


「皆さん、お疲れ様でした~ ホテルに帰りゆっくり休んで下さいね~」

のほほんとした表情の冥菜が最後に挨拶すると、生徒達やGS達はぐったりした様子でその場に座り込んでしまう

予定よりも除霊時間も長く内容も例年と比べてきつかっただけに、生徒やフォローしていたGS達の疲労はかなりのものだった


「雪之丞さんとピートさんは元気そうですね……」

そんな中で元気そうなのが雪之丞とピートの二人である

魔鈴やエミですら疲れた様子なのに、二人はあまり疲労も見えずに元気だった


「きつい仕事は慣れてるからな」

「僕の場合はバンパイアハーフですし」

魔鈴の問い掛けに当然だと言いたげな雪之丞と微妙に苦笑いを浮かべるピートの二人を、エミや唐巣は半ば呆れ気味に見ていた

GSと言えど体力や霊力に限りはあるし、この場に居る一流のGS達ですら疲労しているのだ

それにも関わらずまだ余裕がある二人を、周りのGS達も信じられないように見ている


(確かに、雪之丞さんの普段の修行を見てれば納得もしますが……)

雪之丞がいかにタフかは、日頃一緒に居る魔鈴はよく理解していた

荒行と呼ぶに相応しいようなきつい修行を、黙ってれば毎日でもしているのだ

それに加え天狗の元に修行に行くと、全身ボロボロで帰ってくるのだからタフにもなるはずだった


(しかし、少し目立ち過ぎですね)

魔鈴やエミなど雪之丞をよく知る者はある程度理解しているが、あまり知らない者は少し胡散臭そうに見てる者も多少居る

魔装術のように何か危ない術でも使っているのかと疑ってるのかもしれない

まあ霊力で身体能力を強化したり出来る術もあるが、この時代のGSには伝わってないし誰も使えない

早い話が自分より雪之丞の能力が上なのを、認めたくない者が居るという事である

まあ相手は一流と呼ばれては居るが魔鈴も名前も知らないような者だし、実際たいした相手ではない


それに雪之丞は確かに少し目立っているが、唐巣やエミや冥子と親しげに話しているので悪い影響ばかりではないのだ

アシュタロス戦の功労者である彼らと仲がいいのは、それだけで雪之丞にとってプラスだった

実際唐巣は雪之丞への微妙な視線に気付いて、積極的に話し掛けているようだし

まあそれぞれ受け止め方は違うが、雪之丞の実力がまた一つ業界に知れ渡るのは確かだろう


そして六道女学院の生徒の一部もまた、雪之丞に視線を向けていた

同じ年くらいな為にライバルとして見る者も居れば、強い雪之丞に惹かれてる者も居る

この辺りはピートも同じで、六道女学院で二人の名前が知れ渡るのは時間の問題かもしれない


それぞれの思惑を抱えつつ、除霊実習は終わりを告げる事になる


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