初夏の訪れは女子高生と共に……

その後は当初の予定通り交代で休みながら夜明けまで除霊は続くが、生徒達の疲労や消耗は予想以上に激しくエミや魔鈴達GS組も最後まで前線で除霊に参加する事になる

おキヌに関してはしばらく休んでいたが、本人の希望により戦線に復帰していた

ただネクロマンサーの笛だけは必要性もなくなったため、最後まで使われる事がなかったが


(私、甘えてたのかもしれない。 美神さんや横島さんに……)

この実習で一番変化があったのはおキヌだろう

絶対的自信があったネクロマンサーの笛が突然使えなくなった事で、おキヌは自分がいかにネクロマンサーの能力や周りに甘えていたかを気付けていたのだ

かつての横島もそうだったが強力な能力は本人を助ける半面、甘えや油断など悪い一面も持ってしまう

美神令子という必殺的能力を持たない存在が身近に居るがゆえに、おキヌは自分がいかにネクロマンサーの笛に頼り切った霊能者だったかを再認識していた

そして同時に令子や横島などの周りの人に、自分は甘えていたのだろうとおキヌは考えていく


(横島さんが何も話してくれなかったのは、私の弱さのせいかもしれない)

おキヌはずっと考えていた

何故横島は何も言わずに去ったのだろうと……

その理由は今でもわからないが、自分が周りに甘えて守られてきた存在だったとすればそれも無関係ではないのではと思ってしまう

今回突然ネクロマンサーの笛が使えなくなった事はおキヌにとって決していい出来事ではないが、結果的にそれが自分の現状を改めて考えるキッカケとなった事は確かである


ただネクロマンサーの笛を使えるという事は、現在のおキヌにとって数少ない自信だった事もまた確かだ

自分の現状を冷静に考えるキッカケを掴んだのはいいが、不安定なネクロマンサーの笛はおキヌに新たな課題と不安も感じさせてしまう

それがいい事なのか悪い事なのかは、おキヌ自身もわからない事だった



一方海坊主を追い払った横島達は、再び地元の見物人に混じって見物していた


「これが本来の除霊実習なのでござるな」

結界で護られた場所から積極的に襲って来なくなった悪霊を除霊するだけの生徒達を見たシロは、少しつまらなそうである

それは本当に除霊を体験するだけであり、実際の除霊より安全で極力危険がないのだ

先程の危機的状況の後という事もあり、シロには甘くぬるい除霊に見える


「そんなもんでしょうね。 学校の行事で怪我人や死人なんか出せないし、失敗すれば学校の名前に傷がつくわ。 本来はリスクが少ない除霊なのよ」

つまらなそうなシロとは違いタマモは納得した様子だった

そもそも若く未熟な生徒達に、それほど危険な除霊をさせるはずがないのだ

魔鈴と雪之丞の本来の依頼も、生徒を指導しながら実戦でのプロの技術を見せるという依頼だったのだから


「まあ美神さんの除霊に比べれば甘いだろうけど、本来のGS仕事はあんなもんらしいぞ」

令子の除霊や人狼の価値観でしか判断出来ないシロは甘いと考えたようだが、普通の一般的GSは必ずしも危険な依頼ばかりではない

それに危険があれば出来る限りリスクを減らすのは当然だし、命を賭けて悪霊と戦うのは令子などの一部の人間だけなのだ

横島は危険な仕事が除霊だと考えるシロに、魔鈴の除霊を見せた方がいいかと考えていた

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