初夏の訪れは女子高生と共に……

「来てるんですか!? それにどうやって沖合いの敵を……」

戸惑い思わず声に出して独り言のように呟く魔鈴に、エミや雪之丞などの周りの人は不思議そうな顔をする


「詳しくは帰ってから話すわ。 退治はしてないけど、もう戻って来ないと思う。 あと私達の事は内緒でお願いね」

魔鈴は沖合いの方を見つめタマモを探すが、もちろん人影など全くない

魔鈴やエミ達が操る者を探して沖合いを見ていた中で、どうやって敵を倒したのか不思議に思う


「ちょっと、なんかあったワケ?」

「ええっと……、悪霊を操ってた存在はもう居ないみたいです。 退治はしてないようですが、逃げ出したらしくて……」

戸惑う魔鈴に不安を感じたエミが声をかけるが、魔鈴の返事は戸惑ったまま微妙な説明だった

おそらく横島やシロも居るだろうし、横島が何かしたのかもしれないと感じる魔鈴だが、彼女も詳しく聞いてないのでよくわからない


「なるほどね。 ここは頼むわ」

魔鈴の微妙な表情と最初のタマモと言う言葉で、エミは大筋で内容を理解したようだ

悪霊達の動きも鈍く低級妖怪も消えた現状では当初の予定通りの作戦に戻す方がいいので、前線を魔鈴達に任せたエミは冥菜のところに行き作戦変更の話し合いに向かっていく

その後冥菜や唐巣を含めた幹部で話し合いが行われて、原因不明のままなので警戒は怠る事は出来ないがすでに生徒は限界だった為に、当初の予定通り緩やかな長期戦に変更される事となる

この話し合いでエミは、魔鈴の名前を出さずに敵が少ないうちに生徒達の半分を休憩させるべきだと話し、冥菜はエミの様子から危機が去った可能性が高いようだと理解したようだ

何があったのか少し気になる冥菜だったが、エミの様子から詮索無用だと悟り詮索する事はなかった

まあ下手に詮索して、エミの機嫌を損ねてまで知るべき事でないと判断したようである

GSならば誰でも秘匿してる奥の手の一つや二つあるし、黒魔術を得意とするエミならば離れた相手を除霊する事も可能だと判断したようだった

結果的に横島達の行動は一部を除いて全く知られないままに終わる事になる



しかしその一部には、タマモやエミすらも全く予想しなかった人物が混じっていた

それは横島の最初の攻撃を偶然目撃したおキヌである

一本目を見たおキヌは、そのまま漠然と空を見つめていたのだ

最初は流れ星かと思ったが、二本目を見た時にそれが流れ星とは違うと気付いていた


「横島さん……」

そして三本目でおキヌは光の出所を偶然突きとめてしまう

どうやったのかは解らないが、横島達三人がそこに居たのだ

まあそれだけならば横島が何かしたのか解らないのだが、おキヌは絶対に横島達が何かをしたのだと確信している

そんなおキヌの確信を裏付けるかのように、悪霊達は連携がとれなくなり低級妖怪達は逃げていく


(やっぱり、横島さんなんですね)

いつの間にか別人のように変わっていたが、横島が大切な人を前に見てるだけな訳がない

その対象に自分が入ってない事は理解しているが、それでもかつての横島を思い出させる優しさを感じたおキヌは言葉にならない懐かしさを感じてしまう

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