初夏の訪れは女子高生と共に……

さて時が少し戻っておキヌがネクロマンサーの笛を吹く少し前頃、横島達の方居る公園は混乱し始めていた

警察官は見物人や屋台の人などを避難させようとするが、避難したのは半分くらいで残りは居座っていたのだ

中には酔っ払って警察官に食ってかかる者も居たくらいである


「クッ…… 仕方ないから俺は加勢に行くから、お前らは避難しろ」

そんな中で魔鈴達の現状を見てられなくなった横島は、タマモとシロを避難させて自分が加勢に行こうと考えていた

まあ横島とて自分一人で状況が変わるなどとは考えてないが、それでも文珠のストックは大量にあるため邪魔にはならないだろうと考えているのだ


「先生! 拙者も!!」

決意を固めつつある横島に、シロは真剣な面持ちで食い下がる

自分だけ逃げるという選択肢は、シロの価値観では有り得ないものだった

現状の危険性を理解してるがゆえ、ここは横島と争っても引くつもりがないくらいの気迫がみなぎっている


「だから落ち着きなさいって言ってるでしょ!! バレないように加勢する方法はあるのよ。 後はあっちの作戦とタイミング次第なんだから少し待ちなさい!」

すっかり加勢しに行く事に考えが傾いている二人に、タマモは怒鳴るように言い放った

状況や自分達の事などいろいろ考えて密かに援護する方法を考えていたタマモは、すぐ熱くなる二人に軽く苛立ちを感じているようである

タマモとて出来るならば即座に加勢に行きたいが、それではデメリットが多すぎるのだ

必死に考えている隣で騒ぐ二人に苛立ちを感じるのは仕方ないだろう


「ああ、ゴメン」

からかう口調などではなく本気で怒りの表情を浮かべるタマモに、横島とシロは毒気を抜かれたように大人しくなっていた

タマモが本気で怒る姿はそれだけ珍しいのである



そんな言い争いをしてる間に、おキヌのネクロマンサーの笛が横島達の場所にも響いて来ていた


「ネクロマンサーの笛を使った? やはり六道女学院の方は余裕がないのね」

現状の把握をしつつ、悲しく今にも張り裂けそうな感情が伝わる笛の音色にタマモは少し心が痛む

タマモはおキヌの事が決して嫌いだった訳ではない

ただ横島と比べて横島を選んだだけであり、人間の中では好きな部類に入る存在なのだ

立場上どうする出来ないが、心の奥ではおキヌに立ち直って元気に生きて欲しいと密かに願っていた


「おキヌ殿……」

そしてそれはシロもまた同じである

横島とおキヌの埋められない溝の為、シロもまた黙って横島に着いて来たが別におキヌに不幸になって欲しい訳ではない

横島の価値を理解しているシロはおキヌの気持ちを理解出来るのだが、それでも現状ではどうしていいかわからない

おキヌとシロの違いは、横島に対して下手な遠慮や嘘がなかった事だろう

しかしそれはルシオラという存在を知らなかっただけであり、偶然が産んだ結果なのである

まだ幼いシロには理解出来ない事も多いが、それでも複雑な感情を抱えているのは仕方ないのかもしれない


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