初夏の訪れは女子高生と共に……

さて全体的な状況だが、おキヌのネクロマンサーを筆頭に遠距離攻撃のパターンが多彩になった事である程度の変化をもたらす

やはりネクロマンサーの対悪霊攻撃が最も有効なのだが、遠距離全体で見ても多少除霊効率は上がっている

最もネクロマンサー笛の範囲は結界から少し外くらいで留めており、押し寄せて来ていた悪霊が来なくなった事が最も変わった事だろう

それにより中近距離で除霊していた生徒は低級妖怪だけを相手にすればいいので、全体的に考えればかなり生徒側は楽になっている


「困ったわね~ 誰か知性のある者が向こうにも居るみたいだわ~」

ネクロマンサーの笛により状況が楽になり生徒達に安堵感が広がる中、冥菜はため息と共に次の策を考えていた

確かに状況は改善したが、それは一時な物だった

悪霊達はネクロマンサーの笛が使用された後、海岸になかなか近付かなくなったのである

先程まで大量に押し寄せていた悪霊が、数を減らして広範囲から少しずつやって来るのだ

敵はネクロマンサーの限界を待つように、短期決戦から朝までの長期戦に変更したようである

それはGS達が海岸から出ないのを知っているかのような行動だった

長期戦でGS達の霊力を削って、朝方に総力戦をしかけて来る気なのだろう

冥菜としては生徒達の早期崩壊の危機は乗り切ったが、それはあくまで時間稼ぎでしかなく早めに敵の知性のある存在を除霊しなくてはならない



しかし、ここで誰も予想が出来ない事が起こってしまう

突然おキヌのネクロマンサーの笛の音色が止まってしまったのだ


(よこしま……さん!?)

その瞬間おキヌは、周囲を観察しながら笛の範囲を調整していた

海岸の端から端まで見つめ背後に居るクラスメート達を見た瞬間、偶然遠くに居る横島の姿を発見してしまったのだ


(な……なんで……!?)

横島の姿を見た心が乱れおキヌの心臓は、バクバクと強く鼓動する

そして同時にネクロマンサーの笛から音色が消えていた

この瞬間、おキヌに悪霊達の事を思いやる余裕など無くなっていたのである



この時、幸いにもおキヌの変化や動揺に気付いた者は僅かだった

冥菜と鬼道とかつてのGS仲間達だけである

他の生徒達やGSや教師達は、悪霊が止まった事によりおキヌが止めたと多くの者は考えていた

まさか突然ネクロマンサーの笛が止まってしまうなど、おキヌを良く知らない者にとっては考えもしないだろう

それだけネクロマンサーの能力は信頼度や期待度が高いのである


「氷室、どないしたんや!?」

「氷室さん!?」

「おキヌちゃん!!」

慌てて鬼道が駆け寄り、それを見たかおりと魔理も驚き声をかけるがおキヌは反応しない


「氷室、しっかりしろ!!」

鬼道が呆然とするおキヌの肩を掴み強く呼び掛けると、おキヌはようやく我に返るが表情は真っ青だった


「あれ……、私何を?」

危機迫る鬼道の表情や心配そうなかおりと魔理の表情に、おキヌは一瞬何が起きたのか解らず不思議そうに首を傾げるだけである


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