初夏の訪れは女子高生と共に……

「助けに入るにしても、考えてじゃないと邪魔になるだけよ」

一見冷めた風にも聞こえる言葉を続けるタマモだが、横島やシロよりも真剣に海岸を見つめて考えを巡らせていた

極端な話あれだけの霊能者が苦戦するだけの悪霊や低級妖怪の数を相手に、単純に人数が三人増えたところで状況はたいして変わらないだろう

それに横島はタマモとシロを戦わせるつもりはないし、タマモも出来れば横島があの中に入って戦うのは避けたいと考えている

GSを辞めてまだ僅かな期間しか過ぎてない今、横島が表立って除霊に参加すれば横島がGSを辞めた意味がなし崩し的にうやむやにされる恐れもあった

横島と魔鈴の関係がどこまで知れてるかタマモにはわからないが、あまり横島が目立つと横島に除霊させるために魔鈴を巻き込む危険があるかもしれないとも考えていたのだ


(助けるにしてもバレないように隠れて的確に助けないと……)

タマモは横島とシロの様子を伺いつつ、どうするべきか思案を巡らせていく



「遠距離攻撃の手段がある生徒は、個々の能力を使って除霊するように通達してちょうだい~ 教師とGSにはフォローをするようにお願いね~」

一方海岸の冥菜は一般人の避難や結界の強化に加えて、とうとう生徒の除霊への縛りの一部を解放する事を決意していた

流石に全員の除霊を自由には出来ないが、遠距離攻撃を得意とする除霊が出来る生徒には個別の除霊方法を許可する事にしたのだ

最も遠距離攻撃が得意な生徒は余り多くない式神や霊波砲などを使う生徒は居るが、対多数戦の現状ではあまり効果はないだろう

冥菜の真意はおキヌにネクロマンサーを使ってもらう事である

それというのも海岸に来る前に、冥菜は生徒達がどの程度自分で霊能アイテムを持って来たか教師に確認させて報告させていたのだ

全員水着な為に、霊能アイテムなどを持参した生徒はすぐにわかるのである

わざわざ全体に向けて遠距離攻撃を許可したのは、おキヌを特別扱いしない為と他にも生徒の除霊効率を少しでも上げるためであった

中近距離まで許可すると個々の戦い方がバラバラになり集団除霊に支障が出るが、遠距離のみならばその支障が少ないと判断したようである


冥菜の指示により生徒達には多少の動揺が走るが、当の遠距離攻撃が得意な生徒はやる気を出していた

「えっ!?」

そしておキヌもまた動揺とやる気の両方で心が揺れる


「遠距離って、私もですか?」

おキヌは担任である鬼道に驚いたように問い掛けていた

周りの生徒がきつそうなのは感じているが、令子と共に除霊してきたおキヌにとってはこれはまだ普通の範囲内だと感じていたのだ

これは除霊実習という授業の一部であり、まさかネクロマンサーの笛で悪霊を掃討するなど考えもしなかった

令子が持って行けと言うから持って来たが、実際使う事はないだろうとおキヌ自身考えていた為である


「ああ、氷室お前もや。 というか多分お前が本命なんや。 海岸全体の結界をサポートする感じで頼むで! ただし長期戦になるから、悪霊の様子見ながら休み休みでな」

少し戸惑いのみえるおキヌに鬼道は細かく指示を出す

23/32ページ
スキ