初夏の訪れは女子高生と共に……

一方海岸の六道女学院の生徒達だが、すでに混乱気味で本来の力をあまり出せずにいた

第2陣の途中から悪霊に加えて低級妖怪までが集団で攻めて来ており、その姿に惑わされたり怯えたりと経験不足がモロに影響している

中央の防衛をしている2・3年の生徒達は教師達の指示の元でなんとか除霊出来てるが、一歩間違えれば総崩れになる危険性はそのままだった


「なんでこれほどの数が!?」

中央部の主力はクラス対抗戦で活躍したメンバーが中心だが、彼女達も苦戦を強いられている

一対一の対人戦には慣れて自信もある者達だが、攻撃の質よりも数が欲しい現状ではやはり苦戦を強いられていたのだ

現六道女学院のトップクラスの実力を持つ弓かおりもまたそれは同じで、破魔札で素早く攻撃しているが悪霊達の数からすれば焼け石に水であった


まあ一般的なGS免許を持つ霊能者でも、対多数除霊の切り札を持つ霊能者はあまりいない

現代の霊能者の大半は霊能アイテムに依存した能力しか持たないため、仮に一流と呼ばれる霊能者でさえ突発的な悪霊の大群にはどうしようもなかった



(このままではマズイわね~)

そして後方で全体的な指揮を取る冥菜は、現状に少し冷や汗を流していた

破魔札などの霊能アイテムは悪霊の予測の倍は持ち込んでいるため数は足りそうだが、生徒達の霊力は別である

生徒達は霊能者を目指す者としては優秀なのだが、長期戦でのペース配分などは正直難しい

理由はわからないが、今もなお海岸沖合には周辺から悪霊が集まっているのだ

仮にこのペースで悪霊達が続けば、間違いなく生徒達が崩壊するのは目に見えていた


「海岸周囲の見物人を避難させてちょうだい~」

あまりの状況の悪さに、冥菜は最悪の事態を想定して海岸周囲の見物人の避難を警察に依頼する

地元との交流や六道女学院のイメージの問題もあり、あまり騒ぎたくはないのだがこのままでは海岸と街を仕切るように張られた簡易結界がいつ突破されてもおかしくない

そして後方の簡易結界を二重にするなど、街に悪霊が行かないように対策を講じていく



そうして生徒達や冥菜が奮戦していく中で、左右に別れたGS達はようやく海岸の大部分を制圧していた

これでようやく最低限の除霊体制が整うのだが、GS達は除霊の手を止めず自分達が率先して除霊を続けるままである

当初の予定を大幅に越えた悪霊の数に、最早誰もが生徒達だけでの除霊が不可能だと悟っていた



(こんな時、美神さんや横島さんが居てくれたら……)

一方中央部の前線付近で破魔札をばらまいて悪霊達や低級妖怪を除霊していたおキヌは、周りの生徒達の焦りや不安を感じて危機感を募らせている

おキヌ自身は大量の霊団や悪霊達と対峙した経験があるためまだ冷静だが、周りの生徒達の焦りや不安は限界に近いと感じていた

こんな時に一緒に危機を乗り越えて来た仲間達が居ない現状に、おキヌの心にも静かに不安が広がっていく


(私がしっかりしなきゃ!)

幽霊時代も含めて経験だけならば自分も負けないと気を引き締めるおキヌだが、それは心の底に広がりつつある不安や焦りの現れでもあった

事態はますます混迷を深めていく


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