初夏の訪れは女子高生と共に……

「横島、もう始まってるみたいよ」

「魔鈴殿と雪之丞殿の霊力を感じるでござる」

二人が感じたのは魔鈴と雪之丞の戦闘中らしき霊力だった

悪霊自体は力が弱く横島達の場所からは感じないが、よく知る魔鈴と雪之丞の霊力の高まりは感じる事が出来たようである


「あれ? 予定と変わったのかな~ じゃ見学に行くか」

依頼書よりもかなり早い時間に始まってる事に少し疑問を感じる横島だが、元々GS稼業は除霊計画が変更される事は珍しくない

先程海に行った時も感じたが、事前の調査書や例年の報告書よりも悪霊の数が多い訳だし予定が変わったのだろうと考えて三人は海岸に向かっていく


「すいません、本日は海岸付近の除霊によりここから先には行けません」

横島達が海岸近くに着くと、入口の場所では警察官が立ち入り規制をしていた

横島は深く考えなかったのである程度近くで見学できるだろうと楽観的に考えていたが、当然海岸は警察官により封鎖され簡易結界で海岸から悪霊が街に流れるのを封じている


「他に行きましょ、高いとこなら見えるわよ」

少し驚く横島を尻目にタマモは海岸封鎖を予想していたらしく、早々に海岸を見渡せる場所に移動していく

そして横島達が着いたのは、海岸を見渡すように作られた小さな公園だった

公園の端は海岸に隣接して結界が張られており、その手前では近くの一般人達が除霊を見物している


「屋台があるでござるな」

公園に入った横島達だが、その光景に少し驚いてしまう

公園には一般人の見物人が多数おり、なんとそれを目当てにした屋台の出店なども数件並んでるではないか


「いや~、今年は例年に増して凄いな~」

ある見物人達は除霊を見ながらビールと焼き鳥で宴会をしている

話からすると毎年この時期に行われる除霊には見物人が多数集まるらしく、いつの間にか屋台なども来るようになり勝手に祭状態になっているようだった


「なんか複雑な気分だな」

見世物ではないのだし結界があるとはいえ危険ではと思う横島だが、この地域の人にとってはイベントのような扱いなのだ

まあこの除霊が始まった当初は町の観光関係者や漁業関係者が除霊の成功を願い集まって祈ってたらしいが、毎年失敗もなく安全だった為にいつの間にかイベント化したのが現状らしい


「それはまあいいとして、あっちは妙ね。 当初の予定とまるで違うわ」

横島とシロは屋台や見物人を見渡していたが、タマモは海岸での様子を見つめている

そこでは当初予定されていた陣形とはまるで違い、海岸の左右を六道女学院側が確保してなかった

悪霊の数の多さも気になるが、あの布陣では海岸全体を封鎖する簡易結界を突破されかねない


「本当だ……、何かあったのは確かだな」

人員の配置も違うが悪霊と戦う主力が本来の生徒ではなくGS達になってる現状に、横島とシロにも緊張が走る

そして何も知らず一般人が見学しているこの場所も、あまり安全でないのを感じていた

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