初夏の訪れは女子高生と共に……

横島達が海岸を後にした10分後、沖合に設置してある結界が解除されていた

例年では日が暮れる前に結界を解除して、結界の沖合に散らばっている悪霊を引き付けて全て退治しているのだ

悪霊は結界のある場所の近海に比較的散らばっており、結界を解除する事により海岸に引き寄せられて来るのである



しかし今年は違っていた

例年では完全に日が暮れるまでは悪霊の活動は微弱でしかなかったのだが、今年は凄まじいほどのスピードで悪霊や低級妖怪が集結している

まるで誰かに操られているがごとく……



「なっ……、そんな馬鹿な……」

最初に気付いたのは六道女学院の教師の一人だった

彼は結界の解除と悪霊の様子を監視するために、一人で海岸に待機していたのである

この除霊にも過去に何度か参加しており、一応監視はしているが過去の例から安全だと油断していたのだ


「まずい! すぐに知らせないとっ!!」

例年とは違い凄まじいスピードで沖合に集結する悪霊の姿を確認すると、教師は顔を真っ青にして慌ててホテルに戻っていく



「もう悪霊が集まってるの~?」

教師や監督GSや生徒達がまだ休んでる時間だが、責任者だった冥菜は万が一を考えて起きていたようだ

慌てた様子の教師の言葉に自身も窓から確認するが、そのスピードに珍しく表情が厳しい


「すぐにみんなを起こしてちょうだい~」

相変わらずの口調だが、言葉から発する緊張感は滅多にないものだった

教師が慌てて他の者を起こしに行き、冥菜自身もそれに続いていく



「霊達の様子がおかしいの~ 申し訳ないけど至急準備してちょうだい」

「えっ!?」

仮眠をとっていた魔鈴が冥菜に起こされ外を見ると、驚き愕然としてしまう

沖合に居る悪霊の数はすでに想定をこえるほどで、一部がすでに第一陣として海岸で暴れ回っている


「魔鈴君、エミ君 我々で先に行って海岸の悪霊を片付けよう。 これ以上海岸を悪霊で埋め尽くされたら生徒達では対象できない」

魔鈴が水着に着替えて部屋を出るとすでに唐巣やエミなどは準備を完了しており、急遽唐巣の提案でGS組だけで先に海岸の除霊を行う事になった

本来は悪霊達が海岸に到着する前に、海岸に簡易結界で防衛陣地を築くはずだったのである

実戦経験の乏しい生徒が多いだけに、結界を使用した防衛陣地内での除霊になるはずだったのだ

最低限海岸の後方半分は死守しなければ、四方八方から悪霊に攻められる事になる

生徒達ではその対象は難しく、海側以外の場所から悪霊が来ないように先にGS達が除霊する必要に迫られていた


「わかりました」

「ええ、早く行くワケ」

魔鈴や雪之丞を含めたGS組は生徒達より先に海岸に急いでいくが、そこはすでに悪霊や低級妖怪が大量に上陸した後だった


「チッ! タイガー、時間を稼いで!」

海岸に到着したGS達が除霊を始める中、エミはタイガーに周囲を守らせて霊体撃滅波の準備に入る


「ピート君はエミ君のサポートを」

そして唐巣はGS達が連携を取れるように気を配りつつ、目の前の悪霊の除霊をしていく



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